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拾った言葉ノート

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作文・エッセイ
公募ママ

公募歴5年、入選回数は200以上。驚異の入選確率を誇る塩田友美子さんには、どんな秘密があるのだろう。読めば自分も入選できる!?

近頃、私は一つ思い違いをしていたことに気づきました。

公募活動は決して孤独ではないということです。

どこかで誰かが同じように苦しみ、また楽しみながら何かを生み出していると実感したからです。

前回こちらの連載にて胸中を打ち明けたところ、思いのほか反響がありました。

夜中に一人、書いては消しを繰り返すことに意味を見出せなくなったことを載せたのですが、SNSや公募ガイド社に、共感や励ましの声が届き、同じような気持ちを味わっている方が多くいると知ったのです。

そして、一人ひとりのメッセージに胸を打たれました。

現代では顔を突き合わせないSNSで、好き放題に発言する傾向があります。

そんな中でポジティブな声をかけ合えるつながりは貴重で、世の中捨てたものではないと思いました。

私はたまに、人からいただいた言葉を書き記すことがあります。

そもそもメモ魔気質で私には様々なノートがあるのですが、その中で公募にも使えるのが「拾った言葉ノート」です。

そこにはテレビや本で見聞きしたものや、大好きな作家や音楽家の気に入った言葉なども書いています。

身近な人とのちょっとした会話や、子どもの何気ない話にグッときたことも中にはありますし、自分の思いつきや考えを書くこともよくあります。

人柄や立場により意味が変わってくるので、誰が言ったかもなるべく書いています。

ぼんやり考えていたことを形にしてくれた人がいたときや、聞いたことのない表現に出会ったときの感動を風化させたくないからです。

ノートをめくってみると、例えばこんなことが書いてありました。

「言わなくてもわかってもらえると思うのは甘えだ!」

これは学生時代に親友から言われた言葉です。

誰かにわかってもらえない時、どことなく相手のせいにする傾向があったのですが、言われてみると「自分が伝えていなかったからなのか!」と衝撃を受けたのです。

それからは、理解し合いたい相手に、伝わる話し方を心掛けたいと思うようになりました。

また、こんなに真正面から向き合って言葉をくれる友人が今もいることを幸せに感じます。

他には

「ママのお誕生日に、バットと目隠しとスイカあげるね!」

というような、幼い娘との他愛のない日常会話なんかもありました。

なんだか面白くて、読むたびにほほえましいのです。

スマホでは写真を撮り逃すことはありますが、言葉はあとから切り取って残すことができ、読めばその時の空気感さえよみがえってきます。

すべて走り書きのメモのようなものですが、それをパラパラめくると単純に「いいなあ」と感じます。

悩んだ時に解決の糸口が見つかることもありますし、たまに公募の材料を拾えることもあります。

好きな言葉を並べてみると、自分がどのような考え方に惹かれ、どういう人間になりたいかまで見えてくる気がします。

これはどんな本よりも面白く、もし誰かが同じようなノートを書いていたらぜひ見せてほしいくらいです。

公募もゼロからネタを探すのは大変なものです。

しかし、自分の好きな言葉を集めたノートを眺めるだけでもインスピレーションがわいてくるのでお勧めです。

きっと人生で一番の愛読書となることでしょう。