「小説の取扱説明書」~その51 才能とは何か
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第51回のテーマは、「才能とは何か」です。
スイッチが押されると才能が開花する
NHKスペシャル「シリーズ人体Ⅱ『遺伝子』第2集 "DNAスイッチ"が運命を変える」という番組を観ていたら、才能は誰にでもあると言っていました。
ただ、スイッチが押されないとだめで、何かのタイミングでスイッチが押されると才能が開花するんだそうです。
どんなタイミングかというと、その多くは「うまいね」のように褒められたことがきっかけのようです。
または、誰にも褒められなくとも、他人が四苦八苦することを苦もなくやれ、「私はこれをやることが人より得意らしい」と思う。あるいは、そう思うまでもなく熱中している。
こうなると、もっとやりたいと思い、どんどん才能が伸びていくようです。
まあ、そんな理屈を言わなくても、皆さん、そうでしたよね。作家になりたいという人のほぼ全員が、「書くことが好きで、勉強しなくても国語の成績はよかった。『作文、うまいね』とよく言われた。言葉が泉のようにわいてきて止まらない」といった人なのではないかなと思います。そして思いましたよね? 「もしかしたら私って天才?」と。
才能は書いているうちに開花する
ところが、なかなか入選しなかったりすると、「才能、ないんじゃないかな」という疑問が急激に鎌首をもたげてきます。スランプに陥ったり、急に書けなくなったり、書いたものが陳腐に思えたりしたときも、「才能がないのかな」という言葉が浮かんできます。
でも、これは絶対に考えてはいけないことです。
パスティーシュの名手、清水義範先生はこう言っています。
「作家を目指す人は、才能があるかどうかは一度忘れたほうがいい。才能があるから入選して、ないから落選するのだと考えると、粘りがなくなるんです。私には何か才能があるはずだ、まだ見つかっていないだけだと思うほうがいい結果につながります」
ときどき、「私には才能がありますか」と聞く人がいますが、才能は最初からあるものではなく、書いているうちに「できる」と自信を得て、表現力、構想力、発想力、持久力、独自性などのスイッチが次々に押されていくのだと思います。だから、書かずに「才能がありますか」と聞いても意味がありません。設問自体が間違っています。
必死でやれば、別の才能が開花することも
才能を磨くという行為は、埋まっているかどうかわからない原石を探して延々と掘り続ける行為に近く、やってもやっても結果がでないとくじけそうになります。
でも、入選はしなくても、「書けた!」とか「我ながらいい出来だ!」と思えるとモチベーションが上がります。ささやかでもいいので、「成功体験」を積み重ねるのが継続の秘訣です。
しかし、「ハードルは下げられるだけ下げた、無謀な挑戦もしていない、枚数も原稿用紙で5枚ぐらいの掌編だ。にもかかわらず、いつもいつも箸にも棒にもかからない作品ばかりで、正直書くのが苦痛だ」となったら、いよいよ才能なしというジャッジをくださないといけなくなるかもしれません。このとき、作家になれなければ意味がないと思うと危険です。
生き方は多種多様です。プロ作家を目指して書く人もいれば、物語を紡ぐのがただただ楽しくて書く人もいます。もちろん、書かない人生もまた良し。
でも、必死にやれば、小説の才能は開花しなくても別の才能が開花し、ひょんなところで実を結んだりします。だから、清水義範先生の言葉を借りれば、こう言うしかありません。
「才能をいい訳にせず、粘り強く、何度でも挑戦してください」
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。