「小説の取扱説明書」~その47 小説を書くには想像力が必須
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第47回のテーマは、「小説を書くには想像力が必須」です。
1%の情報と99%の想像力
百田尚樹の『フォルトゥナの瞳』という小説には川崎市の「八丁畷」というマイナーな駅がでてきますが、取材時に聞いたところ、「この街に縁もゆかりもなければ、行ったこともない」とのことでした。
それでもプロの手にかかると、まるで土地勘があるんじゃないかと思うほどリアルに書けてしまいます。1%の情報があれば、残りの99%は想像で補って書いてしまえるんですね。
小説の場合は、事実とは異なることを書いてもかまいません。実在する街を書く場合でも、「こんな感じの街」ということがわかればいいのであって、事実を書く必要はありません。
ただ、あまりに事実とかけ離れたことを書いたのでは実在の街を出した意味がなくなりますから、ある程度は調べて書きます。その点、今はインターネットがありますので大助かりですね。
ここで言う調べるとは、Googleマップを見たり、地元のことが書いてあるサイトを読んだりすることですが、これくらいはしないと、「この作者、あまり調べずに書いているな」とは思われます。逆に、よく調べて書くと、「土地勘があるな。地元の人かな」と思って親近感が湧いたりもします。
小説を書く効率は、調べものに関してだけ言うなら、ネットがない時代に比べて10倍ぐらい楽になっているのではないかと思います。
頭の中で具体的に絵が浮かべること
想像力があるというのは、頭の中に絵を描く能力があるということでもあります。小説の場面を書くとき、この能力は必須です。見たことも聞いたこともなく、しかも、全く絵が浮かんでいない状態では場面を書くことはできません。書けば、なんとなくぼんやりとした情景になるのではないでしょうか。背景が白紙の舞台のような。
ぼんやりとした情景ならまだしも、今ある知識や経験に引っ張られることもあります。
たとえば、小学生が企業ものの小説に挑戦し、ブリーフィングの模様を書く。そこにはなぜか黒板があり、日直までいて、なんとなくホームルーム然としてしまう。なんの情報もなく、それを裏打ちする知識も経験もなければ、そうなるのは当然ですね。
感情に関しても同じです。「気持ちはうれしいが、正直迷惑だな。でも、そうは言えないし」というとき、人はどんな表情や仕草、行動をとるか、経験のない人には書きにくいでしょう。いや、経験があってもなかなか書けないものです。
こんなときは、誰かの体験を借りる。たとえば、映画やドラマ。
映画やドラマの登場人物はいろいろな感情を持ち、さまざまなしぐさ、表情、リアクションをしますが、そうした感情表現、身体表現は大いに参考になります。
実体験がなくても、疑似体験と想像力があれば、誰でも見てきたようなリアルな嘘がつけるのです。
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。