「小説の取扱説明書」~その45 読後感と納得感~
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第45回のテーマは、「読後感と納得感」です。
完結させるだけでなく、読後感をよくする
たとえば、こんなストーリーがあったとします。
主人公のタカオは小学生。クラスメートのリュウは何かとタカオに反発し、嫌がらせをしてくる。それがエスカレートし、ある日、リュウは「ケンカで勝負をつけよう」と言い出した。タカオは仕方なく売られたケンカを買うことにする。
この場合、どうすれば話が終われるでしょうか。
対立構造の物語ですので、二人が対決をし、勝敗が決すれば一応話は終わります。しかし、それだけでは不十分です。もっと読後感よく終わらせたいです。
主人公タカオはケンカに勝ったとしましょう。そこで「やった、勝った」と言って狂喜する。これだけだと後味が悪いです。なんだか勝負に勝てばいいと思っているようで、底が浅い印象を受けてしまいます。
勝つかどうかより、どう勝つかが問題です。
では、どう勝てばいいかと言うと、正々堂々と戦ったがゆえに主人公は相手の手にはまり、窮地に陥りますが、味方の協力やこれまでの努力が実り、最後は大逆転。しかも、勝つだけでなく、相手を許すことで大団円を迎えるというのが定石です。
いや、そうでなくてもいいですが、勝つことに痛快さ、爽快さが伴うような結末が理想です。
未解決の問題を残さない
どんなに小気味よい結末を迎えても、「これで問題はすべて解決した?」と思われてはだめ。しっくり来ません。
上記の例の場合も、勝負には勝ってもリュウは嫌がらせをやめないかもしれませんし、その可能性を残したままでは終わった気がしません。
嫌がらせをしてくるのにはなんらかの原因があるはずです。話を完結させるには、相手の心の問題も解決に導かないと、「ああ、これで終わった。もとの平和が戻った」とは思えません。
問題を解決せずに終わるのは、ミステリーで言えば謎を残したまま終わるようなものだと思いましょう。
誤解がないように言っておくと、純文学的な深淵なテーマを扱う場合、あえて謎を残すことがあります。そう簡単に「人間はこういうものだ」と答えをだせるものでもないですから、結論は行間の中に書く。すると、答えをあずけられた読者は一人勝手に思いを巡らし、答えを導きだそうと考えてくれます。
純文学的なテーマを扱った小説以外では、結末を迎えたとき、作者は「すべて問題が解決したか」と考える必要があります。
それで未解決の問題が残っていたら、「その後、こうなった」のように説明を加えますが、一言説明しただけでは済まない場合はもっと前のほうまで遡り、何枚か書き足さなければならなくなる場合もあります。
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。