「小説の取扱説明書」~その40 Xのある数式~
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第40回のテーマは、「Xのある数式」です。
ストーリーは数式
小説のストーリーや展開を考えていくのは、方程式を解くのと似ています。
方程式か、ああ、もうそういうの苦手だった、と思うかもしれませんが、そんなに難しい話ではありません。
7 + □ = 9
みたいな数式です。
この□をXにすると、ちょっと数学っぽくなるかもしれません。
7 + X = 9
7という状況があって、それを9にしたい。
じゃ、Xはいくつ?
誰でもわかりますね。2です。
小説でもこれと同じことをやっていますね。
自殺と見られる状況があって、しかし、他殺の可能性が出てきた。
では、犯人はどのようなトリックを使って自殺に見せたのか。
このトリックが、前の数式で言えばXですね。
あるいは、10年後の未来にタイムスリップした、としましょう。
その理由は? なぜ来たの? なぜ来ることができたの?
この理由がXです。
Xは、辻褄が合っていないといけません。強引な力業でもだめです。
小説を書くときには、こうした大小さまざまなXがたくさん出てきますね。
板を重ね、穴を通す
〈なんとなく出掛けた〉
こういう文章があると、現実味がないと思ってしまいます。そういうこともなくはないと思いますが、多くの場合はなんらかの理由があるはずです。
そこで、「妻に買い物を頼まれた」ことにする。
しかし、これだと緊急性がないから、「嫌だ」と断る選択肢が生まれてしまう。何か行かざるを得ないような状況にできないか。
すぐに買わなければならないものが必要となったことにしようか。それともメンタルの部分から状況を設定し、妻の命令に逆らえない夫ということにするか。
そんなふうに外堀を埋めていくわけです。
方程式を解くのも、一つだけ解くのならそんなに難しいことではありませんし、時間もかからないでしょう。
しかし、小説を書いていると、こうした方程式がいくつも出てきて、こっちの方程式では「整数の偶数」という答えがでたのに、そのあとの方程式では「13」という答えを得てしまった。どうしよう、矛盾してしまう、とこんな事態に陥るわけです。
四方八方の状況に整合性をつけ、辻褄を合わせる。小説を書くことにはそういう数学的なところがあります。
阿刀田高先生は、これがうまくいかない状況を、「板に穴を空けることはできたが、何枚かの板を重ねたとき、穴が通らない状態」と言っています。
そこがストーリーメイクの難しいところですが、一本筋が通って、「貫通した」と思えるアイデアを得たときは、まさに数学の問題を解いたときのような爽快感があります。
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。