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「小説の取扱説明書」~その39 プロットがいらなくなるには~

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作文・エッセイ
小説の取説

 

公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。

第39回のテーマは、「プロットがいらなくなるには」です。

化石の発掘

前回に引き続き、再びスティーヴン・キングの言葉を借りましょう。

キングは構成(プロット)を化石の発掘にたとえています。

 ストーリーは以前から存在する知られざる世界の遺物である。作家は手持ちの道具箱のなかの道具を使って、その遺物をできるかぎり完全な姿で掘りださなければならない。(中略)
 どれだけ腕がよく経験豊かな者でも、化石をまったくの無傷で掘りだすのはむずかしい。できるだけ傷をつけないようにするには、シャベルではなく、エアホースとかパームピックとか、ときには歯ブラシとかの繊細な道具が必要になる。プロットは掘削機のような馬鹿でかい道具だ。掘削機を使えば、固い土から化石を取り出すのは簡単だろう。それは間違いない。だが、そうすると化石が粉々になってしまう。掘削機は粗暴で、無個性で、反創造的である。私に言わせれば、プロットは優れた作家の最後の手段であり、凡庸な作家の最初のよりどころだ。プロット頼みの作品には作為的で、わざとらしい感じがかならず付きまとっている。
(スティーヴン・キング『書くことについて』)



化石を見つけ、頭が見えたから、そのすぐ真下に胴体があるのかと思ったら、実際はあり得ないよじれかたをして埋まっていて、胴体は横のほうに伸びていた、というようなことはよくあります。
構成も決まりきった形のほうがバランスがよく、わかりやすいですが、物語のあるべき形は実際に書いてみなければわからないものです。

誰でもストーリーメーカーになれる

言いたいことはわかります。プロットがないとうまくいかなかったからプロットを作ったのに、今度は作るなって、どっちなんだと。

プロットは作ってかまいません。「凡庸な作家の最初のよりどころ」と言われても、事実、凡庸なのだから仕方ないと思いましょう。

しかし、いつまでもプロットに頼るのではなく、徐々に自立していくようにしたい。プロットが地図であるとするなら、地図なしで山に入って、これまでの経験や知識によって勘を働かせ、頂上まで到達し、無事、帰還できるようになりたいです。

そのためには、身もふたもない話ですが、愚直なまでに物語を自分の中に取り込み、自分の中の物語スイッチを押すと、自動的にストーリーがするすると出てくるようになっていないといけません。

そんな「アイデアが天から降ってくる」みたいなこと、絶対ならないと思うかもしれませんが、それはまだ物語が不足しているからです。小説や漫画を読む、映画やドラマを観る、毎日それをやっていれば、誰だってストーリーメーカーになれます。

人によっては10年、20年かかる場合もありますが、必ず物語人間になれます。

この物語開眼の時は、突然やってきます。昨日まではストーリーなんて降ってこなかったのに、今日になったらできるようになっている。「この展開だったら、普通、こうしないとまとまらないよね」の「普通」が普通にわかるようになる。

自分を信じて、日々物語を自分の中に取り込むことをしてください。

(ヨルモ)

 

ヨルモって何者?

公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。