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ヨルモの「小説の取扱説明書」~その30 小説に必須のもの その3 リアリティー~

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作文・エッセイ
小説の取説

 

公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。

第30回のテーマは、「小説に必須のもの その3 リアリティー」です。

リアルである必要はないが、リアリティーは必要

小説にとって必須のもの、その3は、リアリティーです。

つまり、現実性、真実性、迫真性。

話し言葉では「リアルだ」と言ったりしますが、リアル(事実)である必要はありません。

たとえば、交通安全のポスターに事故現場を描くとしましょう。

その際、リアル(本物)の血を使ったからといってリアリティーが出るわけではありません。

それより、血痕だけが残された事故現場で泣いている女の子を描いたほうが、交通事故の悲しさを表現できます。

絵の具は本物の血ではありません。その意味ではウソですが、「泣いている女の子」(ウソ)によって、「交通事故を起こしたら大変なことになる」という事実を表現する。ここがポイントです。

小説も同じで、リアル(事実)でなくてもかまいません。しかし、リアリティーがない話ではだめですね。

現実に起こりそう、起こってもおかしくないと思える話

では、小説にとってのリアリティーとはなんでしょうか。

よく、「この表現、リアルだなあ」と言ったりしますが、これは「生々しい」「ありありと感じがわかる」ということだと思います。

それも必要ですが、「リアリティーのある話」とは、「現実に起こり得る話」「ウソっぽくない」という意味です。

フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(映画「ブレードランナー」の原作)の主人公デッカードは、火星から逃げてきたアンドロイドを捕まえる賞金稼ぎです。

アンドロイドは精巧にできていて、テストをしなければ人間と見分けがつきません。中には脳に人間の記憶が埋め込まれ、自分を人間だと思い込んでいるアンドロイドもいます。そうしたアンドロイドは、テストの結果、「自分はアンドロイドだった」という事実が判明したとき、自分の人生を否定された気になり、そんなバカなと人間のように苦しむのです。

その姿を目の当たりにして、最後にはデッカード自身、自分で自分をウソ発見器にかけます。自分ももしかしたらアンドロイドなのではないかと思うわけですね。

小説ですから、この話はウソの話です。しかし、ちょっとだけ科学が進歩すれば、「あり得る話だ」と思えます。つまり、「リアリティーがあるなあ。我が身に起こってもおかしくない」と思うわけですね。

リアリティーのない設定をする場合の対処法

一方、こんな話はどうでしょうか。

〈健一はいじめられていたが、人は仲良くすべきだと思い、いつも笑顔を絶やさなかった。すると、いじめっ子ともすぐに仲よくなれた。〉

いじめはよくないと訴えたいのだと思いますが、理想を書いているだけで、リアリティーはありません。

こんな話、現実にいじめられている人が読んだら、こんなのウソだ、絵空事だと思ってしまいますね。

もちろん、読後感をよくするために、「あり得ない話だけど、世の中、こうあってほしい」という願いを込めてそう設定する場合もあります。

しかし、その場合は、99%はリアリティーある話で占め、ウソは一つだけにする。

全体がリアリティーある話で固められていれば、一つだけウソがあっても、本当のように思えるものです。

(ヨルモ)

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ヨルモって何者?

公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。