ヨルモの「小説の取扱説明書」~その18 描写のコツ~
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第18回のテーマは、「描写のコツ」です。
説明できない“感じ”
小説には三種類の文章があります。
説明文と描写文と会話文です。
会話文と説明文の説明はおいておくとして、問題は、描写文って何? ですね。
島田雅彦先生はこう書いています。
描写とは、絵画における筆づかいや配色に相当します。
(島田雅彦『小説作法ABC』)
端的に言うと、説明できない“感じ”を書いたものですね。
たとえば、「悲しい」と書くことはできますが、これは内面の説明ですね。
「悲しい」では伝わらない悲しさを書くのが描写です。
道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。
私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり、紺飛白の着物に袴をはき、学生カバンを肩にかけていた。一人伊豆の旅に出てから四日目のことだった。
(川端康成『伊豆の踊子』)
「私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり、紺飛白の着物に袴をはき、学生カバンを肩にかけていた。一人伊豆の旅に出てから四日目のことだった。」
このあたりは説明ですね。
「雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。」
このあたりは描写的です。
“感じ”を表現しています。
まず諦めること
では、どうしたら描写ができるかというと、これは「言うは易し」ですね。
描写には、情景描写と心理描写がありますが、「こんな景色」や「こんな思い」を伝えるとき、「説明したって伝わらない」とまず諦めることが肝心です。
たとえば、〈新緑の中を歩くのは気持ちいい。〉と書いたとしましょう。
「そうですね」と頭では理解してもらえても、「実感」はしてもらえないのではないでしょうか。
そこで、主人公に新緑の中を歩いてもらう。
そして、主人公が体験した出来事を書く。
そうすれば、読者自身、
「新緑の中を歩くのって気持ちいい」
と思ってくれるかもしれません。
つまり、出来事を書くことで読者にも同じ体験をしてもらうというのが、描写のコツではないかなと思います。
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。