ヨルモの「小説の取扱説明書」~その9 語りの中性性~


公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
さて、第9回目のテーマは、「語りの中性性」についてです。
主人公に憑依した「ナレーター」
「語り手って、ナレーターですよね。大河ドラマとか朝ドラで、最初と最後に出てくるあれですよね。小説に語り手なんているんですか」と、聞かれたりします。
確かに、ドラマや映画で表現しているような、語り手らしい語り手はいないかもしれません。そういう作品が大半です。
でも、いないということではなく、その存在を消しているといったほうがいいですね。
語り手が主人公に同化して、あるいは憑依するようにかたちで一体化して、いないかのようなふりをしています。
語り手が中心になって語っていくと、どうしても語り手の価値観が紛れ込みます。
「そこに美しい少女がいた」なんて書いたとき、「美しい」というのは語り手の主観だったりします。
一元描写の誕生
江戸の戯作の頃はそれでもよかったのですが、近代文学が発展してくると、読者も成熟します。
「作家の価値感はいいよ、出来事だけ書いてよ。どう思うかはこっちが決めるから」となったわけですね。
かくて、語り手は無色透明の存在になり、主人公自身の目をよりどころに(カメラ代わりに)作品世界を映すようになったわけです。
これが一元描写ですが、一元描写は主人公の目を使って書きますので、そうやって書かれた文章を読むと、読者自身も自分の目で作品世界を覗いたような気になります。
小説を読んでいて、まるで紙の上で出来事が起きているみたいだ、という臨場感を抱いたことはないですか。それは一元描写がもたらした効果だと思うんですよね。
こんな方法が明治期に発明されていたなんて、すごいですね。
(ヨルモ)
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ヨルモって何もの?
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「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。