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リレー小説 課題1「補習組」第2話

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作文・エッセイ
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「鈴木さんがそう言うなら……そうだな」

佐々木くんは何か考えているようだった。それから、

「今夜、付き合ってくれたら、いいよ」なんて言い出した。

「じゃあ、気がむいたら、七時に駅前の公園においで」

佐々木くんは私の返事を待たずに、教室から出ていった。

私の胸は、またもやざわついている。

「何よそれ。付き合ってくれたら、なんて。一つ聞き間違えたら、告白されたみたいじゃない」そんなバカなことを考えながら、なんだか踊りだしたいような気分で……。

「かよ、なんでスキップしてるの?」

親友のルナの声に、ハッとして、私ったら苦笑いになる。

「彼に真っ当な生徒らしく補習を受けてもらいたいから」という理由を頭に叩き込んで、気持ちを押し切った。

なんでだか、ルナに頼んで、彼女の家で勉強するというアリバイを作った。それから、迷い、悩んで下着と私服を選び、佐々木くんの言う、公園に向かった。

佐々木くんは少し遅れて来た。走ってきたのだろうか。ほのかに汗をかいている。

「行こうか」と、にっこり笑う佐々木くん。私の顔は、ぎこちなく歪んでいるような気がする。

彼はスタスタ歩いていく。私は必死で追いかけながら歩いた。

「ど、どこに行くの」

やっと、声が出たと思ったら、何て間抜けな声だろう。

「ここだよ」佐々木くんは薄汚れた三階建てのビルの前で立ち止まった。

「鳴沢……ボクシングジム」

「鈴木さんももう少し体しぼった方がいいよ」

第2話 原作者

(愛知県 久野しづ 主婦)