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ヨルモの「小説の取扱説明書」~その5 視点の問題~

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作文・エッセイ
小説の取説

公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。毎週金曜日に配信。

さて、第5回目のテーマは、「視点の問題」についてです。

ビデオカメラの位置に立って見る

視点というと、着眼点という意味だと勘違いされそうだが、そういう意味ではありません。

視点は「View Point」。つまり、小説の中の場面を写しているビデオカメラの位置という意味です。

視点は、このビデオカメラが何台あるかによって、

・一視点(一元視点)

・多視点

に分けられます。

また、ビデオカメラ代わりとなる目(知覚)を借りるのが、作中人物なのか、それとも作中にはいない語り手(作者と考えてもいいですが)によって、

・人物視点

・全知視点

に分けられます。

全知視点は、作者視点、神の視点、客観三人称とも言いますが、要するに、各登場人物の内面も、物語の結末も、すべて知っている立場で書かれる視点です。

神の目線「全知視点」で見てみる

1952年に、ノーベル文学賞を受賞した作家『フランソワ・モーリアック』は、「小説家と作中人物」の中で、こんなことを言っています。

「小説家は、あらゆる人間のうちで、最も神に似ている。彼は神の模倣者である。彼は生きた人間を創造し、運命を工夫し、それらに事件や災厄を配し、それらを交錯させ、終局へと導く。」

全知視点もこれに似た視点です。

神話や歴史小説など、“大きな物語”を書く場合、全知視点的な説明ができると便利ですね。

でも、初心者が迂闊にやると、小説自体が全部説明になってしまいます。

また、ある特定の人物(主人公)に感情移入して読んでいるとき、急に別の人物の視点で書かれたりする(焦点移動する)と、戸惑うことがあります。

日本の近代文学の基礎を作った自然主義文学では、一元視点で書くことをよしとしましたが(私小説ですから当然、そうなりますが)、まずは一元視点をマスターし、それでは書けない作品を手掛けるようになったとき、全知視点に挑戦してみる。

すると、スムーズに移行できると思います。

(ヨルモ)

 

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「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。