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若桜木虔先生の指導でデビューした方々の声(山田剛)

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作文・エッセイ

 

第17回歴史群像大賞佳作に選ばれて

入選の報せを手にしたときの感想を一言で表現すれば、〈ぽか~ん〉です。あまりに突然で、あまりに呆気なくて。

嫌な奴だなあ、才能を自慢してんのかい、なんて言わずに、暫く、おつきあいください。

若桜木先生の教室に通いながら添削指導を受けたのは2008年10月からです。

応募作品を書き上げたのが2010年8月31日でしたから、書き上げた時点で、ほぼ2年が経過していた勘定です。

「心理描写が不足しています」「もっと、風景描写を」「もっと、体感描写を」「表情、口調を書きなさい」「時系列に乱れがあります」「視点に乱れがあります」等々。

添削を受けた当初の、いえ、当初からの、ご指導のあれこれです。身に覚えのない生徒は誰一人としていないのではないでしょうか?

なかでも〈視点〉には、参りました。

私は映像の仕事に携わっておりました。映像、シナリオは神様視点ですから、頭を切り替えるのは、本当に、戸惑いました。

いえ、少し見栄を張っていますね。「視点に乱れがあります」「外観描写になっています」と指摘されても、最初の感想は「えっ、何がいけないの?」でしたから。

小説を書いた経験はなくても、読む力はあると自認していた私でしたが、〈視点〉なるものをまったく理解していなかったのです。そんな程度で、書き始めたのでした。

書き始めたばかりの各節の酷さは、先生のお墨付き(?)です。あいつは、まだ嘘をついている、作家(ではないですが)は嘘付きだと先生の本にも書いてある、と疑り深い方は、どうぞ、先生にお確かめください。

賞を戴いた「刺客」は、「用心棒日和」として書いた四作目をベースに、先生のご指導を得て、大幅に加筆し、単発作品として仕上げた作品です。

出版社から入選の連絡を戴いてから、前三作を読み直してみました。

「あれっ、こんなに下手だったの?」

書いた当時は、あんなに熱っぽく、気持ちを籠めて書いたのに……。先生の千本ノックともいうべき、添削を受けている間に、いつの間にか、腕が上がっていたのです。

この驚きこそ、冒頭に書いた〈ぽか~ん〉の正体です。

ご理解いただけるでしょうか。

応募直前の、先生とのメールのやりとりを思い出します。

「まず、冒頭からして問題があるので、チェックを入れました」

8月30日の朝の先生からの返信メールです。8月30日ですよ。9月1日必着で、明日中には投函しないといけないのに! 800字のあらすじだって何も手をつけていないのに!

私はむっとして、ファイルを開きました。

●四年前ではなく、その時点のリアルタイムの出来事として書く。回想形式で書いている分だけ弱い(なぜなら、主人公が無事に切り抜けたことが予告されているわけだから)

●全体的にダイジェストです。回想で書くと、どうしてもそうなってインパクトが弱くなります。風景描写も心理描写も足りなくなる●

はあっ。なるほど。回想シーンをそっくり冒頭に移動しただけじゃ駄目なんだなあ。

で、書き直しました。

どなたかの体験談に、「私は嫌われているのではないか」という主旨の文章を拝見致して、思わず苦笑しましたが、私も同様の感想を何度も(スミマセン)抱いたものです。

でも、24時間以内に添削、返信してくださるなんて、誰でもできる指導でしょうか。

作家を志望する、小説を書こうと思う者ならば、イメージを働かせましょうよ。

断じて、否、でしょう。

応募から発表までの八か月、てっきり落選したと思っておりましたから、この間は心置きなく(?)幕末モノの初めての長編に挑戦しておりました。いまも後半を書いています。

2008年10月、通い初めて2回目の教室で、私の企画書を一読された先生が即座に、「600枚以上、必要だね」と仰った場面を、今でもよく憶えています。

当時の私には、600枚など途轍もない分量に思え、到底、信じられませんでした。

ですが、先生の公式の通り(先生の公式を破ったばかりに)、すでに600枚は軽く突破、最終的には800枚を超えそうです。

それでも、先生は、取り敢えずエンドマークを打つまで書いてごらんと、温かく、厳しくご指導してくださっております。

書き上げたときに、長編なるものの正体の尻尾くらい掴む経験ができるかも知れませんし、きっと、若桜木公式を実体験として再確認し、学び取れると、期待もしています。

私はこの体験記を、先生への謝辞とともに、コンクールに入賞し、プロ作家を目指す皆さんへの、少しでも励ましになれば、と願って、書きました。

たとえ今は先生のご指導が理解しにくい、あるいは疑問に感じる場合でも、先生のご指導に従ってみてください。きっと、上達しますし、後になって得心するでしょう。

私はこの一文のなかでも、初めは「こと」と書いた箇所を「指導」「場面」「経験」と書き直しました。(どの箇所か、読み直してみてください。「こと」と書きがちですから)

これも常の先生のご指導に従っているからなのです。

自分の個性を打ち出すのは、上達し、デビューしてからでいいのですから。

最後に、小説の基本を何も知らないくせに小説を書こう等と思い立った元テレビマンが

基本を教わった原点(原典)、小説超初心者が知っておくべき内容、ということで、

「プロ作家養成塾 小説の書き方すべて教えます」をあげさせていただきます。

もちろん、当時、一読して理解できるわけがありませんでした。視点て何ですか? なぜ回想やカットバックは駄目なのか、便利なのに? というレベルでしたので。

教室に通い、先生の講義を受け、添削を受けながら少しずつ理解に努めた、というのが本当のところです。

(ベストセラーズ刊)

山田剛

2011年『大江戸旅の用心棒 雪見の刺客』で第17回歴史群青大賞佳作。
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