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デビューしたいなら、年に2~3本は長編を仕上げ、応募を続けよ

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作文・エッセイ

 

第9回・日経小説大賞受賞

「作家デビューへの近道」

数十回落選し、デビューまで7年半かかった私に、本来「近道」を語る資格はなさそうですが、若桜木先生のご指導がなければ、もっとかかっていたはずです。

私が若桜木先生のご著書と通信講座から学んだことは、大きく二つです。

第一に、小説執筆の基礎技術。ほんの少しだけ例を挙げておきましょう。

・冒頭に動きを入れる。

・回想シーンは使わず、時系列に並べる。

・設定の説明は、小出しで少しずつやる。

・「言った」という言葉は使わない。

・「こと」や「の」といった代名詞を使わない。

・接続詞「そして」を使わない。

・会話でオウム返しをしてはいけない。

・一つの文章に、動詞は最大で3~4個まで。

・現在時制を多用しない。

など、多数あります。原則論であり、例外もありますが、今では私の執筆にあたって血肉と化しています。

これは、好き嫌いや趣味、文体の問題ではありません。スポーツにたとえれば、基礎体力の問題です。基礎技術が身についていなければ下手をすると小説の体を成しませんし、内容が良くても拙劣な表現になってしまい、もったいないです。

冗長表現を回避してプロの表現に近づけるだけでなく、エンタメ小説にとって極めて重要な「わかりやすさ」をレベルアップするためにも必要な技術です。

第二に、新人賞を取りやすいプロットの選択と設定。

作家志望なら、書きたいテーマやモチーフがたくさんあるはずです。もともと受賞しにくいジャンルに、評価されにくいテーマ・モチーフをひっさげて、渾身の一作を投入しても、良い結果は期待できません。仮に年に一作しか書けないとすれば、(その一年の努力は決して無駄ではないのですが)デビューには直結しない一年間となってしまいます。

先生は博覧強記なので、類似・先行作品とかぶっていれば教えてくださいますし、いろいろな理由で受賞しにくいプロットをあらかじめ排除してくださいます。「プロ作家養成塾」をはじめ先生のご著書にも、どういうプロットがいけないか、手を変え品を変え紹介されていますし、通信講座なら具体的に判断してくださいます。

鉱脈を掘り当てるとして、すでに誰かが掘った場所や、99%そこに鉱脈はないよと思われる場所を、苦労して掘らずに済むわけです。これは大きいです。

先生のゴーサインが出れば、受賞可能性のあるプロットで、狙う賞も決めて書くわけですから、あらかじめ無駄な時間と労力を回避できるわけです。ある程度ご指導をいただければ、自分の判断で受賞しにくい執筆を避けられます。

しかし、当たり前ですが、先生が代わりに小説を書いてくださるわけではありません。水泳と同じです。いくら適切な指導がされても、泳ぐのは自分です。

何回も何回もトライして25mを目指し、25m泳ぎきるうちに泳げるようになるものです。

私は「長編小説を一本仕上げるには、1万個の壁を破る必要がある」と表現しています。

デビューできる保証もないのに、本にならないかも知れない執筆を続けることは、非常に辛いですよね。そのお気持ち、数十回落選の私には、よくよく、よくわかります。

おそらく若桜木先生も同意くださるのではと思いますが、せっかくですので、最後に私なりに作家志望の皆さんに2つアドバイスを。

1.ノルマを決め、毎日書き続けよ

テニスや剣道、野球の素振りと同じで、正しいやり方で習慣化すれば、必ず力がつきます。「自分ほど努力している人間はいない」と言い切れるくらいに書き続ければ、いずれ結果は見えてくるでしょう。

2.年に2、3本は長編を仕上げ、応募を続けよ

再応募も含めて常に自作を何かの賞に応募している状態にしてください。特に最終候補まで残って落選すると凹みますが、その時に他賞に応募中で、しかも手元に最新の自信作が出来がりつつあるなら、それを仕上げて応募し続ければいいわけです。

先生は常に簡にして要を得たコメントをされます。ちなみに私は先生から一度も褒められた覚えがありません。褒められなくても心配は要りませんし、仮に褒められたら、ものすごく自信を持ってください(笑)。

(ベストセラーズ刊)

赤神諒

2017年『大友二階崩れ』で第9回日経小説大賞を受賞。
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