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若桜木虔先生の指導でデビューした方々の声(田牧大和)

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作文・エッセイ

 

第2回・小説現代長編新人賞受賞

先生の講座を知ったのは、細々と江戸ものの小説を書き続けてはいたものの、すっかり煮詰まってしまい、「この辺で気分を変えてみるか。違う時代で書いて、新人賞に挑戦してみようかな」と考えていた時でした。

講座に申し込んでもいないのに、「飛鳥時代で書いてみたいんですが」とメールでいきなりご相談したところ、速攻で返信していただいた回答が、「売れる時代ではありません。時代小説で今、売れるのは、江戸か戦国くらいです」。

この題材で新人賞に応募しても大丈夫なのか、正直なところ自分でも不安でしたので、先生のお返事は内心のもやもやが、一気に吹き飛ぶものでした。

それからが、また嵐のような毎日で(苦笑)。

すぐに受講の申し込みをして、江戸もののプロットを提出すると、2時間足らずで「行けます」とのお返事をいただきました。

ほっとしたのもつかの間、すぐさま、応募できそうな賞を2つ勧めていただきまして、基本、優柔不断な私は、結局「どちらがいいでしょう」と、先生に訊き返す始末でした。

これまた速攻で、きっぱりはっきり「この話の内容なら、こっちの賞が合っています」と、帰ってきたお返事と、その賞の応募要項を見て、愕然。

「うそ……。長編なのに、締め切りまで2ヶ月切ってる……」

睡眠時間を削り、休日の大部分を原稿に充て、時には「間に合う訳ないよ~!」と放り出しそうになりつつ、ほとんど成り行きと勢いで、無事400枚弱を書きあげたのが、応募締め切りの1週間前でした。今だに自分でも信じられない荒業です。

そうやって書き上げた「江戸もの」でいただいたのが、今回の「小説現代長編新人賞」です。半年という短い期間でしたが、受講中、先生にはたくさんのことを教えていただきました。

「烏賊野郎」「この章魚!」なんていう侍同士の応酬の決まり言葉、「さぼる」は、江戸時代にはないこと、「枇杷の剪定」「コハダの塩焼き」に「マクワウリ」(あれ? 小説添削の話だったのでは……?)。

何より有り難かったのは、いいならいい、だめならだめ、とはっきり言ってくださったこと。更に、何がどうだめなのか、なぜだめなのか、ちゃんと伝えて下さったこと。すぐにおろおろ、不安になる私にとっては、前へ進む大きな後押しでした。

今回、先生の添削講座2年連続の「小説現代長編新人賞受賞者」として卒業させていただくのは、予想外の嬉しい出来事となりました。

あの時、もし「飛鳥時代で書きたい」と相談していたのが若桜木先生ではなかったら。

もし、奈良の都、飛鳥の昔に浸りつつ、のんびりマイペースで書き進めていたら。

今頃はどうなっていたんだろう、と、しみじみ思い返す今日この頃です(笑)。

田牧大和

2007年『色には出でじ、風に牽牛』で第2回小説現代長編新人賞を受賞。
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