「第1回なかまぁるShort Film Contest」受賞作品が決定。入賞作品の共通点は?
2019年10月「第1回なかまぁるShort Film Contest」が開催された。認知症の新しいイメージを創っていく日本初のコンテストだ。第1回授賞イベントを終えた、朝日新聞社「なかまぁる」編集長・冨岡史穂さんに話を聞いた。
なぜ認知症を? 「信頼性」あるメディアの発信
「なかまぁる」は、朝日新聞社が運営する認知症専門のウェブメディアです。朝日新聞創刊140周年事業に向けて、社内公募で決まった取り組みの1つ「認知症フレンドリープロジェクト」の一環として、当時の提案メンバーを中心に2018年9月に立ち上げました。
認知症になっても自分らしい暮らしを続けていくための情報として、家族のストーリーや、生活の悩み相談など、日常に寄り添う記事を掲載しています。また医療情報や基礎知識を載せるときは、医療の専門家や医師にも協力していただいています。というのも、認知症は解明されていない分野です。「正しい情報」であることが、「信頼性」につながります。わからないことはわからないと書くということも大切にしています。
ウェブメディア「なかまぁる」冨岡史穂編集長
ノミネートされた作品の共通点は?
今回のコンテストでは、「なかまぁる」のコンセプトから連想される世界観をもったショートフィルムを募集しました。認知症の固定的なイメージをはなれて、もっと多様で自由な人々の暮らしや、だれもが自分らしく暮らしていける社会などを描いた作品です。
応募するジャンルを「動画」にしたことには理由があります。『なかまぁる』でも動画コンテンツをアップしていますが、光や音があることで、雰囲気などが文字以上に、深く、広く伝わるんですね。その伝わり方が「新しい認知症のイメージづくり」にぴったりだと考えました。
「第1回なかまぁるShort Film Contest」チラシ
授賞イベントでは、最優秀賞の作品『The Right Combination』(坂部敬史監督)を観た、映画コメンテーターのLiLiCoさんが大絶賛。映画祭についても「他にはないコンセプト。ぜひ、頑張って続けてください」と熱いエールも受け取ったんです(笑)。
今回ノミネートされた作品や受賞した作品には、共通点があります。認知症になっても自立していることの大切さを描いていることです。
応募作品のなかには、認知症になった=すべてを失っている状態、というような印象を受けるものもありました。今後は、固定観念や偏見にとらわれない作品がますます増えてくると良いですね。例えば将来的には「ロボットが認知症」になってしまう作品もあるかもしれません。いい意味で期待を裏切る作品、アイデアをお待ちしています。
オレンジリングは「認知症サポーター」の目印。
次回応募に向けてのヒント。認知症はますます、自分ごとに。
来年、第2回を予定しています。動画のジャンルは問いません。映画、ドキュメンタリー、MVなどにもチャレンジできます。
今から準備をされる方や、関心を持っていらっしゃる方には、まずは第1回受賞作品を観ていただきたいです。「なかまぁる」サイト内で作品を公開しています。
認知症の課題は、本人だけのものではありません。「当事者」のとらえ方が変化し、家族、親戚、知人、そして「いずれなるかもしれない自分自身」へと広がっています。残念ながら「認知症の予防法」というのは現状確立していません。どんな対策がとれるか。それは住みやすい社会を作り上げていくことではないでしょうか。
こういった「認知症になっても、だいじょうぶ」という視点での発信が「なかまぁる」のコンセプトのひとつです。うまく作品にとりいれてもらえるといいですね。観客や、私たちをあっと言わせてください。
基本情報
認知症当事者とともに作るウェブメディア「なかまぁる」
「第1回なかまぁるShort Film Contest」受賞作品はこちら
最優秀賞 『The Right Combination』坂部敬史監督
優秀賞 『英爺』小野光洋監督
丹野智文特別賞 『介護しよう。MV feat. おばあちゃん』川端真央監督作品
ミュージックビデオ特別賞 『愛のカタチ』加藤マニ監督
第1回なかまぁるShort Film Contest
主催:なかまぁる編集部
協賛:SOMPOホールディングス/東急イーライフデザイン
協力:パシフィックボイス
後援:厚生労働省/認知症フレンドシップクラブ/認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ/ 日本認知症本人ワーキンググループ/認知症の人と家族の会/日本意思決定支援推進機構/ 認知症未来共創ハブ/日本在宅介護協会