祖母の教え
第35回吉徳ひな祭俳句賞で第三席となり、賞状と市松人形をいただきました。
日本人形の老舗である吉徳の俳句賞には、毎年投稿していたので大変嬉しく思います。
入賞句
「雛を出し娘を産んだ日を語る」
選者は俳人である黒田杏子さんで、なんと手書きの総評が!
そこに書かれた「素直に素朴に詠みあげられてなんとも楽しい俳句」という評価を見て、思い当たることがありました。
私は祖母の影響を受けている、ということです。
実は祖母も趣味で俳句を投稿し、よく入選しています。
元は私の叔父が本格的に俳句に携わっており、詠むのを聞いているうちに、祖母も自然と始めたそうです。
祖母の句も「素直で素朴に詠まれている」と評されることが多く、私はいつの間にか手本にしていたのだと、今回の入賞で実感しました。
そんな祖母は学生の頃、宿題の日記が毎回先生に褒められていたといいます。
理由を聞くと「何々があり、どう思った」ではなく「雪がどのように降っているように見えた」というような内容を、毎日書いたというのです。
それを聞いた時は、大きな発見をした気分でした。
同じ光景からでも、人とは違う世界を切り取ることが大切だと気づいたのです。
祖母はずっと同じ場所に住んでいながら毎日書くことができ、そして今もなお俳句を詠み続けています。
これまでの私は、人とは違う特別な経験をしたり、非日常的な事柄がなければそのうち話題に行き詰まると思っていました。
しかし、普段の生活の中で、いつもと違う角度から物事を見たり、小さな変化に気付く目を持てば、おそらく書くことは尽きないのでしょう。
一時は15名の家族の世話や、親戚の子どもたちの面倒も見ていた祖母。
それでも「なんでも大変だと思わないで、楽しくやる」と、今も口癖のように言います。
その前向きな祖母の言葉を、いつも私は心に留めているのです。
悩みや心配ごとがあっても、嘘のないまっすぐな感情を作品に詠み込むと、心が確かに充実してきます。
この心を整える作業は、入賞してもしなくても、作品作りの優れた点だと私は思うのです。