超・戦略的! 作家デビューマニュアル 第4回
小説を書きたい人は、「こういうことが書きたい!」という強い気持ちがある人です。ですが、たいていの人が「間違ったスタンス」で書いています。つまり、全体像を考えないまま、とにかく書き始めてしまうのです。しかし小説を書き始める前には、書きたいシーン、書きたい人物といった部分について考えるだけではなく、全体像を考え、ストーリーの流れをはっきりさせる必要があります。
そこで重要になってくるのがプロットの構築です。イガラシ・メソッドの根幹は、いかにプロットを完璧に、精密に作るかにあります。
まず、プロットとアイデアを混同しないように注意しましょう。メインとなるアイデアを思いついただけでは、小説は完成しません。
イガラシ・メソッドでは、小説を書くことを家造りに例えます。アイデアは「家の柱」、プロットは「設計図」です。建てようとしている家の全体像(プロット)がわからないまま、立派な大黒柱(アイデア)だけがあっても家は建ちません。しかし、正しく構築した設計図(プロット)さえあれば、少なくともそれなりの家を建てることはできます。また、全体のバランスを考え、デザインを決定し、それから素材を集めたほうが美しい家が建ちます。つまり、プロット(設計図)をしっかり書くことが、小説として読むレベルに達するものを書くための条件なのです。
優れたアイデアは「時間をかけて考える」「努力する」といったことでしか得られません。ですが、プロット作りは才能に関係なく、学べば誰もが身につけることができる技術です。小説を書こうと思ったのであれば、まずはプロット作りに専念するのが近道なのです。
もちろん、プロットだけでなく、小説を書く上では当然アイデアも重要になります。「よいアイデアが浮かばない!」という人がよくいますが、アイデアは身近なところにこそあります。たとえば現在働いている会社、業界、あなたを取り巻く環境……、これらはあなたにとっては普通のあたり前のことでも、他人にとってはこれらすべてが未知のことです。なんとなくの雰囲気はわかっていたとしても、実際の業務内容やそこで働く人間の感情は、あなたほどには理解できていません。そして、そこにこそ、小説のアイデアが転がっているのです。
また、現在の小説新人賞では、情報小説としての側面が求められます。あらゆる職業、仕事、業界、職種、その詳細で正確な情報=リアリティが評価の対象になります。あなたが最も精通しているのは、あなた自身に関する情報です。あなたのリアルな内面から発生する事柄なら詳細な情報も持っています。アイデアを思いつくためには、まずは自分の内面を観察することが基本なのです。
五十嵐貴久(いがらし・たかひさ)
小説家。1961 年東京生まれ。出版社勤務を経て、2001 年『TVJ』でサントリーミステリー大賞優秀作品賞、『リカ』で第2 回ホラーサスペンス大賞を受賞し、翌年デビュー。警察小説、時代小説、青春小説、家族小説など幅広い作風で映像化も多数。著書に『1985 年の奇跡』『交渉人』シリーズ、『パパとムスメの7 日間』『相棒』など。
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