超・戦略的! 作家デビューマニュアル 第1回
作家になるにはどうすればいいですか?
そんな質問が、編集部に寄せられることがあります。答えはカンタン。小説の新人賞を獲ってデビューすればいいのです。
でも、その新人賞を獲ること自体が難しいじゃないですか!
もちろん、そうです。天才でもない限り、何の苦労もせずに獲れるというものではありません。しかし、最短距離で獲る方法はあります。たいていの人が間違ったやり方で、間違った方向に進んでいるんです。
作家になるための正しい方法論。その一つが「イガラシ・メソッド」です。ベストセラー作家の五十嵐貴久さんが自身の経験から考案した、新人賞の攻略法。今年、『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉としてデビューした志駕晃さんは、まさにこのメソッドを実践して作家になりました。
イガラシ・メソッドとは何か? 本当に新人賞でデビューできるのか?
シリーズ第1回は、本誌「公募ガイド」で掲載した五十嵐貴久さんのインタビュー記事をご紹介します。
作家的才能というものは必要ない。
必要なのは淡々と努力すること。
好きで続けていれば3年、
正しい方向で努力すれば1年半でデビューできます。
作家志望者は誰しも、作家になるための一番の近道を知りたいと思うだろう。その願いを叶えてくれる書籍『超・戦略的! 作家デビューマニュアル』がPHP研究所から発売された。
著者は作家の五十嵐貴久さん。「作家になるのは簡単だ」と断言し、もっとも効率的な方法論=イガラシ・メソッドを提唱している。
「作家になる方法はいくつかありますが、長編小説新人賞を獲るのが一番効率的です。一方で、基本的なことが欠けている応募作品がとても多い。たとえば、内容は素晴らしいのに応募する賞の方向性が間違っているもの。ジャンルが違う。アプローチの仕方が違う。その新人賞がどんな作品を求めているか、想像する力が足りないんです」
本書には、狙うべきジャンルから、五十嵐さんおすすめの新人賞、傾向と対策、応募のマナー、そして長編小説の書き方まで、新人賞を攻略するための具体的でリアルな方法が丁寧に書かれている。
作家志望者がもっとも知りたい長編小説の書き方については、最低でも1年かけて取り組み、プロット作りに全力を注げとアドバイスしている。イガラシ・メソッドの根幹は、いかにプロットを完璧に作るかにあるという。
「最終的に100枚のプロットを書くことをお勧めします。まずは、10枚を目安に5W1Hに沿って書きたいことを整理する。それを肉付けして20枚にし、20枚を40枚にし、具体的かつ精密に作りこんでいく。ここではどんなセリフになるだろう、どう展開するだろうと考えながら作っていく。そうすると100枚なんて軽くいきますよ」
プロットを徹底的に作ればその後の執筆がスムーズにいく。数々のベストセラー作品を生み出してきた五十嵐さんの経験が、それを証明しているのだ。
そうして書き上げた作品は最後に推敲する。応募者の中には書き上がったら終わりと思っている人が多いが、むしろ書き終わってからが始まりだ。
「自分の文章を『完成形ではない』と思って読むのが推敲です。20点、30点と思って、文章の質だけでなく小説としての設定も含めて見直すことが大事です。締切がないのがアマチュアのいいところ。納得いくまで直せばいいんです」
アマチュアの人は最初の一発ですべてが完成すると思いがちだ。しかし、そう簡単にはうまくいかない。挫折したり、諦めたりするのを避ける方法が本書に詰め込まれている。
「作家的才能というものは必要ない。必要なのは淡々と努力すること。好きで続けていれば3年、正しい方向で努力すれば1年半でデビューできます」
五十嵐貴久(いがらし・たかひさ)
小説家。1961 年東京生まれ。出版社勤務を経て、2001 年『TVJ』でサントリーミステリー大賞優秀作品賞、『リカ』で第2 回ホラーサスペンス大賞を受賞し、翌年デビュー。警察小説、時代小説、青春小説、家族小説など幅広い作風で映像化も多数。著書に『1985 年の奇跡』『交渉人』シリーズ、『パパとムスメの7 日間』『相棒』など。
『超・戦略的! 作家デビューマニュアル』
五十嵐貴久
(PHP研究所/880円+税)
正しい方法論さえ身につければ、小説家になるのはカンタンだ! 効率よく、ノーリスクで作家になる方法が学べる、超実践的小説家入門。