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受賞のコトバ 2016年3月

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作文・エッセイ
結果発表
受賞のコトバ
第1回 招き猫文庫 時代小説新人賞 第27回 フジテレビ ヤングシナリオ大賞

従来の枠にとらわれないエンターテインメント時代小説を募集。選考委員はあさのあつこ、冲方丁。大賞受賞者には賞金100万円が贈られ、「招き猫文庫」から刊行される。

(主催:白泉社)

受賞者:西本雄治(にしもと・ゆうじ)

1986年、熊本県生まれ。代々木アニメーション学院福岡校CGデザイナー科、ノベルズ科卒業。イラストレーター。彩色の仕事をしながら、時間を見つけて執筆をしている。受賞作『やっとうの神さま』は招き猫文庫より刊行予定。

神様のお導きか悪戯を感じます

はじめまして、西本雄治と申します。

「公募ガイド」を読んで応募先を探していた自分が、こうして文章を書かせていただけているというのは、とても不思議な気分で、神様のお導き、もしくは悪戯のようなものを感じております。

神様のお導きと言いますと、賞をいただきました「招き猫文庫時代小説新人賞」への応募もまた、お導きまたは悪戯だったのではないかと思っています。なぜかと言いますと、時代小説の作家になる気が、公募を見つけるまでは、これっぽちもなかったからです。

そもそも、僕はアニメや漫画、ゲームなど、サブカルチャーといわれるものが大好きで、ライトノベル作家を目指していました。執筆は学生の頃から始まり、働き出してからも仕事の合間に執筆し、応募していました。ただ、結果は落選続き……それが何年も続くものですから、もう無理なんじゃないかと常に感じるようになっていました。しかし、諦めたくないという想いも、同時にあったのです。

招き猫文庫の公募を「公募ガイド」で見つけたのも、そんな時でした。普段ならラノベ以外の公募は殆ど読むこともせずスルーしていたのですが、この時だけは違いました。

『従来の枠にとらわれないエンターテインメント時代小説』ーー公募でこの言葉を見た瞬間、『ラノベのような時代小説』が頭に浮かびました。

僕はアニメや漫画が好きですが、同時に時代劇好きでもあります。七五三の着物を着て、時代劇を見ながらチャンバラごっこをしたこともありますし、学生の時は再放送を録画して見ていました。しかし、だからと言って時代小説を書こうという気は殆どありませんでしたし、公募に興味を持ったこともありませんでした。時代小説独特の世界観を表現するのは、僕には困難に思えましたし、何より、歴史の授業はお世辞にも得意とは言えませんでしたので。

そんな僕が『時代小説』の看板を付けた新人賞に惹かれて応募し、大賞までいただけたわけですから、神様の導きか悪戯を疑わずにはいられないわけです。

受賞作:『やっとうの神さま』

弟子を取ることを条件に道場を継ぐことになった瀬川俊一郎は、やっとうの神を名乗る少女・鈴に気に入られ、二人で暮らすはめになる。その頃、戦神・威風が他の神々から力を奪い、将軍の殺害と戦乱の復活を目論んでいた。人のために生きる鈴、剣に生きる俊一郎と、鈴の力を奪おうとする威風との戦いが始まる。


 

未発表のオリジナル脚本を募集。テーマは自由。大賞受賞者には賞金500万円が贈られる。大賞、佳作のうち1編は映像化される。

(主催:フジテレビ)

受賞者:青塚美穂(あおつか・みほ)

1984年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。調剤薬局事務。2015年、『春死なむ』で第41回城戸賞佳作を受賞。好きな映画は、『ドライヴ』『ヒーロー・ネバー・ダイ』『Mommy』。受賞作『超限定能力』は、昨年12月20日にフジテレビにて放送された。

才能のなさを知ったその先に、道はあります

ヤングシナリオ大賞は、脚本家を目指す私たちにとって、最上級といっても過言ではない大きなコンクールです。正直、私は一次も通過できるとは思っていませんでした。『超限定能力』の応募時のシナリオには、人身事故、電車シーンの多さ、CGが必要など、映像化するうえでのネックが多すぎました。私の筆力も未熟でした。なので、大賞だと言われた瞬間は顎が外れるほどビックリしました。同時に、これは大変なことになったと慄きました。

実際、その後に待っていたのは、本直しという未知の作業。日中は仕事があるので、深夜から朝にかけて、ひたすら書き直す毎日。とにかく時間がなく、自分の力も足りませんでした。作品を人に読んでもらい、「セリフが下手」とか「もっといいシーンを書いて」とか、いろいろ指摘してもらえることは有難いことです。 何より、それは映像化するための過程なのですから、本来であれば喜ぶべきこと。しかし、初めて本直しをする私にとって、最初の頃は、今日は何を言われるんだろう? と毎回恐怖でした。こんなに言われるのは、自分には才能がないからでは……と。

才能の有無に悩むとき、いつも思い出すのが中島敦の『山月記』です。詩人になるという夢がありながら、ゆきすぎた自尊心と羞恥心が邪魔をし、男は他人に自分の詩を見せません。批判され、ダメ出しされると、自分が珠(才能ある人)ではないことに、自分自身が気づいてしまうから、怖くて見せられないのです。そうこうしているうちに、彼は虎に姿を変えてしまう。私はこの男の臆病さに共感します。でも本当は、自分に大した才能がないと思い知ってからがスタートです。才能そのものより、書き続け、見せ続け、批評に耳を傾けることの方が大事です。そうすれば自然と磨かれていき、それなりに良いものになるはずです。

もし、応募するか迷っている方がいたら、とにかく出すことをお勧めします。出さないことには始まりません。たとえ、それで才能のなさが分かったとしても大丈夫です。それを知った先に、道はあります。私の様な平凡な人間でも、このようなチャンスを得られたのですから、皆さんも挑戦あるのみです。

受賞作:『超限定能力』

ある日、突然、「他人の降りる駅」が見えるようになったお気楽大学生の舜太郎。電車の中でしか使えない、そんな些細な「超限定能力」だが、その能力には恐ろしい副作用があった……。この能力と向き合ったとき、自堕落だった舜太郎は大きく成長する。