あなたとよむ短歌 vol.36 テーマ詠「学校」結果発表 ~説明を説明にとどめない~
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「学校」結果発表 ~説明を説明にとどめない~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。3年目に突入しました!
今回はテーマ詠「学校」の結果発表です。恋や青春、先生や友達との思い出、楽しかったこと。さまざまな切り口での短歌が約800首も集まりました。ご投稿ありがとうございました。
毎回、最後にワンポイントアドバイスも載せていますので、ぜひ入賞作品とあわせてお読みください!
それでは、最優秀賞の発表です。
ひいたりわけたりすると苦しい
小学校1年生の算数での定番教材「おはじき」。足し算や引き算の学習に使われます。学校に毎日通って勉強をするという習慣自体にとまどう子の、素直な気持ちが感じられる一首です。
そのままの意味をとれば算数の時間での出来事を詠んだ歌ですが、「おはじき」は学校での人間関係を喩えているのかもしれません。同い年の子が集められ、おはじきのように並んで入学し、授業を受ける。友達が増えるのは楽しいけれど、ときには仲間外れにされたり、グループに分かれてしまったり。そんな複雑な人間関係がスタートするのも小学校からです。
ふたつの意味を感じさせ、共感を呼ぶ、読み応えのある作品でした。
続いて、優秀賞2首です。
質問ばかりしたい放課後
そういえば、お母さんが「お母さんはこう思うよ」と自分のことを話すように、先生も「先生はこう思うぞ」などと話すことが多いですね。先生の普段の一人称は「先生」です。生徒の前では、あくまで先生なのですから。
けれども、それを崩したい。先生に1人の人間として答えてもらいたい。先生に「俺はお前のことをこう思っている」と言わせたい。おそらくは恋心、しかもかなり挑戦的な若い恋心を詠んだ作品です。
「一人称」「質問」「放課後」と学校で使う言葉を散りばめながら、学校という規範から外れた思いを表現しています。なんとも巧みで魅力的な一首です。
字を食むように子らは学べり
「字を食(は)むように」学ぶという表現のインパクト、秀逸さが光る一首です。
子どもたちが机に向かって手を動かす様子は、まるで文字を食べ、知識を食べているようです。成長期の子どもが、あらゆるものを吸収して成長していく様子が、静かな感動をともなって描かれています。試験中の鉛筆の音、懐かしいですね。一首を通して、音の記憶までよみがえってきます。
それでは、佳作のご紹介です!
最後に、「惜しい……!」と感じた作品のご紹介です。
小さくなった体育館よ
選挙の投票会場は、小中学校などの体育館が使われるケースが多いものです。選挙をきっかけに、ひさびさに学校に足を踏み入れたら、体育館の意外な狭さ、用具の意外な小ささに驚く……。大人になった自分と戻らない時間をつきつけられる、ノスタルジックな作品です。
この作品で気になった点は上句です。「選挙にて母校に行けば」という表現ですが「(理由)にて(場所)に行く」というのは、ビジネスの場でも使われるような固さがある表現です。もう少し、一人の人間としての「温度」を出してもいいかもしれません。
小さくなった体育館よ
たとえば、このように変えるとどうでしょうか。おそらく意味は同じように伝わると思います。けれども「母校に呼ばれる」という表現にすることで、母校の方でもこの人を待っていたかのような意味を含ませました。呼ばれる人、呼ぶ母校。個人的な関係性がより深くなった気がします。
作品のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「ファッション」を募集しています。
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「ファッション」。 応募点数制限なし。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌ファッション」をつけてツイートしてください。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末を予定しております。 |
締切 | 2023年3月31日 |
発表 | 2023年5月1日 |