【WEB限定】インタビュー 中村航 プロットだけ大賞新連載記念
公募ガイド夏号からスタートした中村航選「プロットだけ大賞」。
今号では「書き方」を教えることについて、中村先生にお話ししていただきました。
誌面に入りきらなかったインタビューをご紹介します。
■profile
中村航 (なかむら こう)
02年『リレキショ」で文藝賞を受賞。『100回泣くこと』『トリガール!』『デビクロくんの恋と魔法』など著書多数。児童小説や作詞など幅広く手掛けている。
何を書けばいいのか、
常に悩んでいた。
――小説だけでなく、ラノベ、児童小説、漫画原作、作詞など幅広く活動されていますが、どういう経緯だったのでしょうか。
いろいろやってみたいというのはもちろんあるんですが、同じテーマで書く、ということがどうしてもできないんです。1回書いてしまうと、全て書き尽くした、となる。じゃあ次は何を書けばいいのか、というのは常に悩んでいた。いまはそうでもないんですけどね。
そういう中で、児童小説なら書けるかも、書いてみたい、ミステリー要素を入れたどうかな、絵本ならどうかな、とかそういう感じできました。
こんなに幅広い人いるのか?とは自分でも思います(笑)。
――「いまはそうでもない」というのは?
ちょっと自信がついてきたのか、題材さえあれば書けるな、と。題材やハードルがないと書きにくいタイプなんだと思います。児童小説だったら、「子どもに伝えるにはどうすればいいのか?」というハードルがある。それが書きやすい。
最初のころは19~20歳くらいの自分に向けて書いていたんです。「こいつの気持ちに触れるものを書こう」って。それしか発想できなかった。いまはこういう人に向けて、とか、作品によって題材をもらって書いている。つまり書くのが苦手なタイプなんじゃないかと思います。
――苦手……?
書くのが得意な人は、あれこれやらなくても、自分の好きなものとか自分の愛する世界のものを書き続けていると思うから。自分としては本当に苦手意識があります。手を変え品を変えやっている。 本当にちゃんと対応できてるのかはわからないですけどね(笑)。どんなものでも自分の色みたいなものは出てしまっているし、ジャンルがちがっても意外と同じことをやってる気はします。
嘘を書いていても、
嘘にならいように。
――どのジャンルでも気を付けていることはありますか。
「リアリティ」に気を付けていますね。いちばん大事なんじゃないかと思うこともある。感動や理解や共感できるかどうかはリアリティが鍵になる。いかに現実世界に近づけるかもそうですが、物語の中で、こいつはこんなこと言わない、この順番でものを考えない、などを考えて、リアリティをいかに持たせるか。嘘を書いていても、嘘にならいように。流されるまま書かずに、1行1行これはほんとかな?と考えるように気を付けています。
――逆にこれは共通するな、という点はどんなところでしょう。
文体は意外と変えていない気がします。僕の小説は会話文が多いと思うんです。会話文で切り替えながら、地の文で物事を断言していくスタイル、というか。くどくど説明せず断言して書いていく。それは変わりません。
ジャンルによって変わるのはキャラクターですかね。いま気づきました(笑)。キャラクターが変わると、ちょっと地の文も変わる。児童小説なら中学1年生の女の子が主人公だったり、ファンタジーならちょっとふわっとしていたり。字の文やセリフの在り方は変わらないですね。キャラクターが変わるから、セリフも変わる、というだけ。
ほかの小説家の人と話していて、書けるキャラクターは、自分の中で5人なら5人と決まっている、という話が出たんです。そうなのかな?と考えてみたら、自分の描いてきたキャラクターはものすごくたくさんいる。でも、この中学生がお姉さんになったらこの人だな、みたいに、キャラクターの核になる考え方や感じ方……
僕は「思考システム」と呼んでるんですけど、それに年齢や性別を与えると、こういうキャラクターになるっていう。だから人数はあまりいないんだなと思いました。デビュー作『リレキショ』に出てくる「山崎さん」という女性も、男性になると「木戸さん」っていう『絶対、最強の恋のうた』などに出てくるキャラクターになる。
性別が変わっただけなんですよね。もちろんしゃべり方も変わるんですけど。そういう風に、児童小説、絵本、ライトノベルとかになっても、キャラクターが変わってるだけなんだなっていう気がします。
スターが生まれるといい。
――「小説家 中村航」が小説投稿サイト・ステキブンゲイを立ち上げた際、とても驚きました。
自分でも驚いてます(笑)。感覚としては、バンドをはじめるような感覚でした。自分の小説をどこに出せばいいんだろう?って言ってる人もいたりして。すでにいろんな小説投稿サイトもあったんですが、もっとちがった形でできないかなと思ってスタートしました。
あとは、メディアを持ちたかったというのもあります。雑誌や同人誌、ホームページやメルマガという手もあると思うけど、僕の場合は理系の知り合いが多かったというのもあり、小説投稿サイトをやってみようかな、となりました。
――今後はどうなっていくとうれしいですか。
場をつくるので、参加する人の思いでいろいろ変化していくと面白いなと思ってます。やれることはやっていって、お客さんが増えるといちばんいい。書く人は集まっても、読む人が少なかったりします。いまは書く人と読む人はイコールですが、それでいいとも思う。その中で、面白い作品が出てきたらうれしいですね。
――そのひとつがコンテストだった?
そうですね。コンテストでは僕たちも審査員として読むので、スターが生まれればいいなと思っています。
「プロットだけ大賞」は
中村航さんが
設定したログラインをもとに、
プロットだけを募集。
公募ガイド 2023年夏号
- 種類
- 雑誌版
- 金額(税込)
- 780円
- 支払方法
- コンビニ, カード