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あなたとよむ短歌 vol.42 テーマ詠「記念日」結果発表 ~「字足らず」ってアリ?~

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短歌
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あなたとよむ短歌
結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.42
テーマ詠「記念日」結果発表
~「字足らず」ってアリ?~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「記念日」の結果発表です。
記念日の短歌といえば、俵万智さんの《「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日》が有名ですね。今回の投稿歌にも、サラダ記念日に影響されたものや、パロディ、オマージュが多く寄せられました。
一方、誰にでも何かしら記念となる日はあるはず。応募作品をすべて拝読する立場としては、自分らしく「記念日」を詠んだ作品に心が惹かれました。

それでは、最優秀賞の発表です!


パスワードいれる手だけがおぼえてる
 7年前に結婚した日
(おおがクラブさん)

仕事や学校、診察予約、通販など、なにかと必要になるパスワード。「自分の誕生日などわかりやすいものは避けるように」と言われています。そこで結婚記念日の数字を使い、日々入力しているのでしょう。
結婚して7年。結婚記念日も7回目。特に意識せず、忘れてすごしてしまう家庭も少なくないかもしれません。それでも、それでも、パスワードを入力する手だけは自然と動いて結婚記念日を入力する。なんだか不思議ですね。
「記念日」というテーマを的確に捉えながら、他にない視点で表現した作品でした。なんやかんやで、けっこう仲良し夫婦な気がするのも、この歌の面白いところです。



続いて、優秀賞2首です。

あなたとは数え切れない記念日を
書き留めなくてもいいから親友
(つちやさん)

はじめて会った日、はじめてご飯を食べにいった日、はじめてディズニーに行った日。もちろん誕生日もあるでしょう。そうした記念日を意識する必要がなく、自然体でいられる「親友」との関係を、意表をつく形でぴったりと表した一首です。 上句「あなたとは数え切れない記念日を」まで読んだ時点では、ほとんどの読者が「記念日を大切にする……という内容が続くんだろうな」と予想すると思います(私もそうでした)。 それを「書き留めなくてもいい」からこそ「親友」である、と言い切る意外さ、納得感、かっこよさ。とても素敵な作品です。

一人欠け一人増えして血縁は
集い先祖の法要を編む
(貴田雄介さん)

誰かが亡くなり、新しい命が生まれ、入れ替わりながらも親族として集う人間の不思議さ、静かな力強さを感じる一首です。 「法要を編む」という表現が秀逸。編むという動詞には「日程を編む」などの使い方もあるにはありますが、「法要を編む」とはめずらしい使い方ではないでしょうか。
「一人欠け一人増えして」という部分には、編み物の棒を出し入れするようなイメージも重なります。よろこびや悲しみ、ときには憎しみや恨みもひっくるめながら、命が脈々と編まれていく凄みを感じます。

それでは、佳作のご紹介です!



「目的地到着しました」よかったよ、今日はあなたと結婚した日
(真朱さん)

跳ねていた恋も終わりの予感して手帳に書いた記念日を消す
(汐海岬さん)

一度しかないならそれは記念日と言えばよかった今日は三日月
(もりりさん)

結婚の記念に買いしシャガールの青はわずかに色褪せており
(のりのりさん)

二人だけにわかる記念日なのだろう祖母が仏壇にケーキ供えて
(宇井モナミさん)





最後に、こちらの作品を読んでみましょう。


両親の結婚記念日○付けるあんまり覚えてられないから
(一途彩士さん)

「○」は「マル」と読むのでしょう。両親の結婚記念日まで覚えていらんないよ、という気持ちと、一応はお祝いしたいような気持ちと、なんとも微妙な心情が表現されている一首です。


気になったのは下句。「あんまり覚え/てられないから」だと確かに7音7音の定型なのですが、実際に声に出して読んでみてください。「あんまり覚えて/られないから」というふうに読んでしまいませんか?
「あんまり」の「ん」は撥音といって、直前の母音にくっついて1つの音節を構成します。つまり、音読のリズム的には「あん・ま・り」と3音のように読まれるのです。


「ん」は1音として数えるのが短歌のルールだといえばそうですし、定型から外れること自体がNGではありません。ただ、実際に音読すると、多くの人は「あんまり覚えて/られないから」と読むでしょうし、そうなると結句が「字足らず」の状態になります。

面白いことに、人間は「字余り」は早口になるなどして割と読めてしまうものなのですが、「字足らず」だとガクッとつまずくような印象を持つようです。あると思って座ろうとした椅子を、急に引かれたような感じでしょうか。

両親の結婚記念日○(マル)付けるあんまり覚えていられないから 

両親の結婚記念日○(マル)付ける あんまり覚えてられないからさ

たとえば上記のようにするといかがでしょうか? 音読したときに、グッと収まりよく感じると思います。 声に出して読んでみるとわかりますが一首ができた、と思ったあとにはぜひ音読をオススメします。音読すると「音を詰め込もう」「外そう」など、意識的に「字余り、字足らず」を取り入れられるかもしれません。


作品のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「くだもの」を募集しています。
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締切 2023年9月30日
発表 2023年11月1日