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誰でも一生に一冊小説が書ける。①:実体験を小説に押し上げる方法

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リアルに書こうとするとき、実体験は大きな強みになります。ここでは、実体験を小説に生かす方法を考えていきます。

心のもやもやの正体が、わからない人はチャンス

心に強い衝撃を受けたときや、心を揺さぶられるような出来事を体験したときには、人はいろいろなことを考えます。たとえば、親友が亡くなって葬儀に行く。あるいは、日本とはまったく違う異文化にふれ、ショックを受ける。そうしたときは、突然こんなことになるなんてなんだかなあとか、これまで信じてきたことっていったいなんだったのかとか、心が動きます。このときが、何かを書くチャンスです。
さらに、なぜそんな衝撃を受けたのか、その正体がわからなくてもやもやするときは、小説を書くチャンス。それはその体験を小説というかたちにしてもう一度追体験することで、その正体を突きとめようとするからです。
実際、「この気持ちって何?」を解明しようとした小説は、実体験をベースにしたものが多い。
しかし、多くの人は、その段階では日記レベル。それを小説にしようとして、皆さん、つまずくわけです。そこでここでは、実体験を小説にする方法を考えてみたいと思います。

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実体験を活かせば作品がリアルに! その効果と方法

実体験から着想を得ても、すべてそのまま書くとは限らない

実体験から着想を得ても、実体験を書く場合と書かない場合があります。
実体験をそのまま書くのは、そのほうが言いたいことが伝わるとき。たとえば、戦争体験を書きたいのなら、舞台設定はそのまま生かしたほうがいいでしょう。
一方、実体験は書かず、そっくり別のものに変えてしまう場合もあります。それはそのまま書いては差しさわりがあるとき。
たとえば、知人を見て「人とは浅ましいものだ」と思ったとします。で、そこから着想を得て何か書く場合、当然、個人が特定されるような書き方はしません。書きたかったのは人間の姿で、個人としての知人に意見したいわけではないからです。実体験を書くといっても、すべて赤裸々に書くわけではありません。

経験があるからリアルに書ける実体験を書いて全然OK!

実際に体験したことは、書きやすいというメリットがあります。設定はすでにできているわけですし、実際に見たもの、聞いたものであれば、実感をもって書けます。とくに皮膚感覚や感情に関することを書く場合は、実体験は強みです。「経験者は語る」です。
たとえば、結婚生活の良さや難しさを書く場合、結婚の経験がある人とない人とでは、どっちのほうが切実に書けるか。
あるいは、スープを飲んだら思いのほか熱かったという些細な体験だって、まったく経験のない人はリアルには書きにくいでしょう。ある程度の経験がないと、大人の読み物は書けないと言われるゆえんです。
それに着想自体は、基本実体験から得られます。実体験を書いて、全然かまわないのです。

すべてが実体験でなくていい、疑似体験も体験のうち

ごく普通の人生を送る私たちは、刑務所に入ったこともなければ、宇宙から地球を見たこともありません。小説に出てくるような個性的な友人もいませんし、他人に語るような波瀾万丈な人生を送っているわけでもありません。
しかし、1%の疑似体験があれば、あとの99%は想像力で補えます。
実際、死体を見たことがなくても殺人事件は書けますし、死んだことがなくてもあの世は書けます。
まったく見たことも聞いたこともない世界を想像するのは大変ですが、テレビや映画、漫画や小説といった疑似体験と、それを体験したように感じる想像力があれば、ギャングのボスもホームレスも、エイリアンだって書くことができます。

リアリティーをもたせるために、細部に実体験を使う場合

まったくの空想で小説を書く場合でも、リアリティーを持たせるために、細部に実体験を使う場合があります。
たとえば、人の場合。小説の中では誰がモデルとは書かなくても、作者自身はひそかにタレントの〇〇をイメージして書いたり、身近な友人をモデルに書いたり(書くときは、誰がモデルかは特定できないように配慮して!)。
あるいは、場所の場合。どこかの海辺の街を舞台とするときなども、そこがどこかは書かなくても、作者の頭の中では具体的な街をイメージする。すると、海辺の街特有の情景が書け、情景描写が具体的になります。これらは本筋とはあまり関係ないちょっとした細部ですが、実体験があると、こうしたことがリアルに描きやすくなります。

実体験を小説にする4つのステップ

STEP1:自分を振り返って題材を探す

題材を探すために、今まで経験してきたことを振り返ってみましょう。
今の自分に影響を与えた原体験から、ちょっと面白いなと思ったことまで、いろいろなことが浮かんでくるはずです。それをメモします。
いろいろ思い浮かぶ中で、最初に「あれが書きたい」と強く思ったものは、あなたの心の中で常にくすぶっていた思いと言えます。だから、これは題材になります。
「これは書けない。人に言えない」と思ったものも、第三者的には面白い題材です。
ほか、誰も書きそうもない題材が見つかれば最高です。
題材が見つかったら、それを何枚で書くか、ざっくり決めましょう。枚数は、話の大きさに比例します。

STEP2:そこに何か気づきを見出す

書く題材が決まったら、テーマを考えます。
このテーマはごく短いあらすじのようなもので、書くときに道標になってくれますし、ゴールに向かうときの羅針盤にもなってくれます。
これを忘れてしまうと道に迷いますので、紙に書いておきましょう。
次に、作品の中になんらかの気づきを見出したい。気づきというのは、読んだ人が「そういうのってあるよね」「人間ってそうだよね」と読後に思うものです。こうした気づきがないと、「だから何?」と思われます。
ただし、書く前の段階ではなんの気づきもなくてかまいません。気づきは、書いたあとで発見することも多いからです。

STEP3:実体験の中に起承転結を作る

題材とテーマと枚数の目安が決まったら、ストーリーを決めます。
注意したいのは、結末に結びつかない出来事は盛り込まないこと。実話をベースにした場合、実際にあったことだからとなんでもかんでも盛り込んでしまいがちです。
たとえば、知人が急逝し、葬儀に行った話を書くとします。そのとき、いくら事実でも、快晴だった、抜けるような青空だったと強調すれば、主人公の感情と関係があるように思えます。
現実世界には物語的なストーリーはなく、そこにあったもの、いた人は偶然の集合体です。書くときは、ストーリーに関係ないそうしたものは捨て、必要なものだけを抜き出してください。

STEP4:面白くなるように話を盛る

最後に、「この話、他人が読んでも面白いか」と考えてみましょう。
たとえば、「知人の葬儀に行った」だけでは普通すぎると思えば、「60歳の故人に、なんと6歳の息子がいた」のように話を盛ります。
実体験は、実は自分で思うほどドラマティックではありません。
だから、話を盛り、盛った結果、実体験が消し飛んでしまっても、それで話が面白くなれば万々歳です。
ただし、話を盛るのは面白くするためだけではなく、テーマを際立たせるためです。いくら面白くなるからといって、テーマに関係なく話を盛ってしまうと、とりとめのない話になります。テーマにそって盛りましょう。

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