実は、あなたも本が出せる⑥:投稿型プラットフォーム~投稿を読みにきてくれる! ~


読者や編集者とつながれるのが魅力
投稿型読み物とは、WEB上にある読み物のプラットフォーム。
ブログやSNSと似ているが、投稿型読み物には雑誌のように固定読者がいるところが少し違う。クリエイターと読者をより密接につなぐプラットフォームだ。
そのメリットは固定読者に読んでもらえることはもちろん、読者やクリエイター同士での交流も可能なところ。投稿型読み物発の書籍も多数誕生しており、編集者との出会いの場としても機能している。書籍化を目指す人にとって魅カの多いサービスだ。
読まれる工夫がカギ!~STORYS.JP~
100万部のベストセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』を生んだ「STORYS. JP」は、自分の物語を投稿する「実名ストーリーのプラットフォーム」だ。
書籍化された物語は11冊。書籍化されやすいタイプは、
「逆境をバネにした物語が中心ですが、恋愛、家族、旅行、仕事など幅広いですね。暴露系の物語はpv数が多くても書籍化は難しいようです」(編集長・清瀬史さん)
必ずしもpv数の多さが書籍化に結びつくとは限らないが、魅力的な物語を書くことは書籍化の絶対条件だとか。
「読者の心に届ける、自分の弱さを含め、素直に本音を出すこと。目立つのも大切ですが、狙いすぎるといい結果を生みません」
物語は一覧で表示されるため、ビリギャルのように「偏差値40上がったって期間はどれくらい?」「どの大学?」という疑問にこたえる具体的なタイトルをつけ、興味をひくことも重要だ。読まれる物語は、インパクトのある写真を頭にもってくるといった工夫が見られるという。
「STORYS. JPが『殿堂入り』に挙げている物語などを参考にしてあなたの物語を素直につむぎ出してください。きっと書籍化につながります」
STORYS.JPから生まれた本
投稿後、自ら出版社に売り込んだ
STORYS.JPからの書籍化は出版社から声がかかって実現するのが通例だが、会社員のかたわら、ラブレターの代筆を行う「デンシンワークス」を運営する小林慎太郎さんは、STORYS.JPへの投稿と持ち込みの合わせ技で書籍化の夢を叶えた。代筆の依頼に訪れる人たちのエピソードが面白かったため、まずSTORYS.JPに投稿。短い物語を書いたことで弾みがつき、約50枚の原稿に書き直して15社に郵送したところ、出版に至った。
「PV数が多いわけではありませんでしたが、STORYS.JPへの投稿は持ち込み時に大きなアピールになりました。やはり個人ブログとは影響力が違うと実感しています」
『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(小林憤太郎著・インプレス)
最初は気負わず、無料記事から始めよう~note~
文章や写真などが簡単に投稿でき、個人ブログでは難しいコンテンツの売買、フォローやお礼のメッセージを使った読者とのコミュニケーションが手軽にできるのがnoteの特徴だ。
運営するピースオブケイクの三原琴実さんに書籍化の現状を尋ねると、
「多くのコンテンツが書籍化されていますね。ただ、コンテンツによっては、本にするより有料記事などで販売するのに適しているものもあるんです」
とのことだ。たとえば、本にしてじっくり読むより情報の鮮度が問われるものや、貴重な情報だが本にするほどのボリュームがないものは書籍化には向かない。
「noteでは、サッカー専門のライターさんが観戦チケットの買い方などの記事を有料で販売して人気を得ています。こうした記事を本にするのは難しいかもしれませんが、読者にとって有益な情報だから人気があるわけです」
また、出版社から声がかかるには読者の存在も強みになる。最初は気負わず、無料記事から始めて読者を増やすのも―つの方法だ。
「noteにはクリエイターを応援する多くの仕組みがあります。読者がお気に入りのクリエイターに好きな金額を支援できる投げ銭機能もその―つです。pv数も参考にして、読者の反応を見ながら方向性を探ってみるのもいいかもしれません」
noteのメリット
課金もできる
コンテンツ料金は、100円~5万円の範囲内で設定可能。クリエイターの手取りは、売上金額から決済手数料(5~15%)とプラットフォーム利用料(売上金額から決済手数料を引いた額の10%)を差し引いた額になる。
サポートが手厚い
運営側が読者にターゲットメールを送るほか、著名な執筆陣がそろう電子メディア「cakes」での連戟権など、デビューのきっかけをかけたコンテストを多数開催。書籍化を実現した有賀さんもコンテストで連載を勝ち取った。
noteから生まれた本
ファンの存在が評価され書籍化が決まりました
「朝のスープ」をテーマにしたnoteのコンテンツ(note.mu/kaorun)が書籍化された有賀薫さん。
有賀さんの職業はライターで、イラストも手がけるが、仕事は企業ものが多く、料理には携わってこなかった。スープを作り始めたのも、もともとは朝が苦手な息子さんのため。
当初は料理写真の投稿アプリ「miil」に、スープ写真とレシピを毎日投稿。1年分溜まったところでスープ写真の展覧会を開いたところ話題を呼び、「スープ作家」として本を出そうとイベントなどを開催し始めたという。
「スープの活動に絞ったホームページを作ろうとしましたが、あまりに大変で断念しました(笑)。そこでnoteを使ってみたら、ユーザーインターフェースがシンプルで使いやすかったんです」
フォロワー数約2200と固定ファンがいることも出版社に評価され、note開始から約1年後に書籍化の話が舞い込んだ。
「読まれる仕組みが豊富なnoteは書籍化を目指す人に適した場所。運営側が「おすすめ」に入れてくれると直接つながっていない人に読まれたり、「お気に入り」を作っている読者が記事を紹介してくれたりと、ブログのように自ら働きかけなくても読者が増えていくんです」
ちなみに有賀さんは「無料公開派」だ。
「今は知っている著者の本にお金を払う時代。だから無料でどんどん公開し、より広く自分を知ってもらったほうが書籍化につながりやすいのかもしれません」
『365日のめざましスープ』(有賀薫著・SBクリエイティブ)
※本記事は「公募ガイド2017年7月号」の記事を再掲載したものです。