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長編小説一年計画③:プロットを作れ! できるだけ詳しく!

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長編初心者は構想の完成度が不十分であることが多い。だから、そのまま書き出せば大幅な書き直しになって効率が悪い。個々のシーンを考え、詳細なプロットを作ろう!

物語にはリバーサル、逆転の要素が必要

プロットとは小説の詳細な設計図のようなもの。盛り込む場面を具体的に書く。このプロットを作るうえで留意したいことは、以下の3つ。
まず1つ目はリバーサル(逆転) 。安全だと思ったら襲われる、迷宮入りかと思ったら誰かの言葉で急にひらめくといったシーンだ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で言うと、「落雷の日時などわからないと思ったらビラを見て気づく」「頼りないジョージがビフを殴り倒す」「やけになってエンジンを叩いたら動き出す」など、方向が180度変わると展開に弾みがつき、物語も前に進む。

それでもプロットは必要

「プロットどおりにはいかない」のは正解だが、「だから必要ない」とは言えない。ジャズのように即興で小説を書くことができない人は、詳細なプロットを作ってみて、疑似でも長編を書いた経験を積むといい。仮に書けなくても長編の感覚は体感できる。

ストーリーの複雑化と勢いを見せる見せ場

2つ目は、コンプリケーション(複雑化) と言われるもの。これは、人物がアクションをし、それに対するリアクションがすぐに起こらないことを言う。
『バック・トゥ・ザ・フューチャ—』で言うと、マーティーは30年後の未来でドクが過激派に銃撃されることを伝えようとし、ドクは未来のことは知ってはならないとマーティーの手紙を破る場面。マーティーは結局言えないまま未来に帰るが、この答えは未来にある。
観客は焦らされるが、「手紙を受け取らなかった」という答えは出ているのでストレスもなく、答えが出たときの喜びは大きい。
最後は、シーン・シークエンスと言い、作中の短い見せ場のこと。「バック・トゥ・ザ・フューチャーj で言うと、ロレインに言い寄るビフをじゃましようと、マーティーは足を引っかけ、その結果、揉めごとになる。マーティーはスケートボードで逃げ、追うビフは車ごと肥料車に突っ込んでしまう場面がそう。こうした見せ場があると楽しめるし、観客はこの場面に集中しているので展開が隠されるうえ、ストーリーにも勢いがつけられる。

小説初心者でも失敗しないプロットのコツ

文章

プロットの文章は雑でいい。セリフの説明もみんな「と言った」でいいし、誰が言ったかについても下記のように書けばいい。
教頭「マクフライは落ちこぼれだ」
プロットは、下記の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の例のようにアクションポイントとシーンを書き出したあと、次に説明やセリフなどもどんどん加え、プロットだけで100枚にする。本番を書いてから大幅に修正するのは大変だが、プロットなら抵抗なく直せる。これが利点だ。

バリア

物語を面白くする要素は、「対立」「葛腹」「障壁」。まとめて言うと、主人公の目的や行動を阻害するバリア。
主人公が単に山に登るだけという単調なシーンでも、誰かと競争になるなど対立構造があったり、箇単には登れない障壁があったり、登りたい気持ちと登ってはいけない事情との葛藤があるといった設定にすると、面白くない話も面白くなる。
ただし、これらは話の進行を止める要素。やり過ぎると話が停滞するので注意。

出来事

〈マクフライ家は冴えない一家だった〉は単なる説明で、小説では〈冴えない〉と説明するのではなく、読む人に〈冴えない一家だ〉と思ってもらうように書く。そのためには場面、出来事を書く。
当然、プロットも出来事を通して表現する。〈冴えない一家〉を表すなら、父親は頼りにならず、上司にこき使われてばかり、母親は口うるさい。長兄はバイト暮らしで、不在の次兄は刑務所の中。姉は男にまったくもてないといった場面を書く。

バランス

プロットが不完全だった、とならないためのチェック項目は、アクションポイントの位置と長さ。たとえば、セットアップが長すぎないか、各ターニングポイントに至るタイミングは早すぎないか遅すぎないかなど、全体のバランスに注意。
また、この出来事でターニングポイントになるか、主人公は次の幕に進んでくれるか、クライマックスは目的の実現につながるかなどもチェックしておくと、全面的な改稿になるリスクが減る。

小説作法Q&A

Q:長編なんてかける気がしないのですが。

A:マラソンをしたことのない人は完走なんて絶対無理と思う。走れる根拠も自信もない。しかし、1日1kmを42日間で走るのなら、そんなに無理そうでもない。これと同じで、プロットを詳細に作り、連作短編のようなつもりで書けばどうか。長編小説も、5~10枚のシーンの集合体というところはある。ただ、全体を把握する目がないと流れをコントロールできないので、その意味でもプロットは必要。

 

※本記事は「公募ガイド2017年11月号」の記事を再掲載したものです。

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