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小説新人賞受賞の条件②:アウトラインは決まっているか

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概略を決めたら流れに身を任せる

初心者のうちはプロットを作ろう

初心者に近い人がノープランで書き出すと、途中でストーリーラインを見失い、今どんな話を書いていて、どの段階なのかわからなくなってしまうことがある。
こうした苦い経験をすると、地図が欲しくなる。つまり、プロットを作りたくなる。プロットはざっくりとしたものでいいが、細かくしようと思えばいくらでも細かくすることができ、詳細であるほど安心だ。
しかし、そうなると書きながら考える必要がなくなり、書くことがプロットをなぞるだけの作業になってしまう。これはかったるい。しかし、プロットを作るメリットもある。構成する疑似体験になってくれるので、書き慣れないうちは十分に経験しておきたい。

書き出したら自然な流れに乗る

プロットは作っても、書く段階では忘れたほうがいい。

構想に重きを置かない理由は二つある。
第一に、そもそも人の一生が筋書きのないドラマである。あれこれ知恵を巡らせて将来に備え、周到に計画を立てたところで、その通りにいくものではない。第二に、構想を練ることと、作品の流れを自然に任せることはとうてい両立しない。(中略)作品は自立的に成長するというのが私の基本的な考えである。〉

(スティーヴン・キング「小説作法」) 

作品を書くということは作品世界に入っていくということで、自然な流れは入ってみないことにはわからない。事前に筋を考えるのはいいが、書き出したらプロットにこだわらないことが肝心だ。

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第一稿は前に進む、完成度は後回し

村上春樹はこう語っている。

第一稿を書くときには、多少荒っぽくても、とにかくどんどん前に進んでいくことを考えます。時間の流れにうまく乗っちゃって、前に前にと進んでいく。(中略) それだけだと話があちこち矛盾するけど、そんなことは気にしにないで、あとで調整すればいいんです。

(川上未映子訊く村上春樹語る「みみずくは黄昏に飛びたつ」) 

ある場面を書いていて、詳しく書けない場所や職業が出てきても、ネットでちょっと調べるぐらいにして、不足は想像で補う。当然、書き直しもあるが、それは織り込み済み。1回で完成させようとは思わないほうがいい。

終わり方に作法はある?

ストーリーは中途でも、終わった感があればよい

どこを結末とするかは、何を書きたいかにかかわってくる。作者がもう何も書くことがないと思ったところが終わりどころ。そしてそこが読者の納得しどころ。
作者もその作品ではもう言いたいことがなく、読者にも終わった感があるのであれば、ストーリー自体は完結していなくてもいい。
「終わった感」は、物語の最初のほうで提示した主人公の目的の到達し具合による。目的には到達していなくても、このまま行けば到達するだろうと思えるなら、そこで終わりにしてもいい。終わりを予想させてふいに終わると余韻が出る。
映画「卒業」には最後に花嫁を奪ったあと、バスの中で真顔で無言になる長いシーンがあるが、そうした含みを持たせるのもいい。

書き出しはどうすればいい?

中身とマッチしてこその書き出し

私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、有りのままの事実を書いて見ようと思います。

(谷崎潤一郎「痴人の愛」)

何が書かれているんだろうと思わせる書き出しの典型だが、これをいいと思うのは書き出しと内容がマッチしているから。
当然だが、衝撃的な内容でもないのに、形だけ名作をまねしてみても意味がない。書き出しに定型はないからだが、そのうえで、書き出しで注意したい点をいくつか挙げよう。
興味をひく内容であること。話の内容と方向性を示すこと。早めに本筋に入ること。話の輪郭を示すこと。もちろん、内容あっての書き出しであることは言うまでもない。

タイトルの付け方

印象的なタイトルを

『三四郎』 『城の崎にて』などは内容表示型のタイトル。中身がわかりやすい。しかし、わかりすぎてネタ割れにならないよう注意したい。『赤と黒』『坂の上の雲』はテーマを象徴させたタイトル。いずれにしても印象に残るかどうかがタイトルづけの決め手。

ペンネームのよしあし

本人がしっくりくること

ペンネームを使う場合、作者自身がしつくりくるかどうかがポイント。愛着がわき、長い使用に耐えるものを。憧れの作家から1 字もらうのもいいが、名前として自然であることが前提。ただし、ジャンルによっては一般における不自然が自然ということも。

物語構成法基本のキ

物語の基本構造は、神話の昔から変わらない。日本では起承転結、序破急が有名で、脚本家の君塚良ーは「しやがむ・ジャンプする・ひねる・着地する」と言っているが、中身は同じ。また、ハリウッド映画には三幕構成もあるが、この詳細は本誌201 7年1 1 月号か、クリストファー・ボグラー著「神話の法則I」を参照されたい。
余談ながら古い小説では「日記が出てきた」「私にはこんな過去が」で始まり、本編でその中身が語られ、最後に「もとの日記」や「現在の私」に戻るサンドイッチ形式の話もあるが、これは本編を「実話かもしれない」と思わせるテクニック。
重要なのは起承転結などより、話の順番(前もって書いておかないと効果が薄れるとか、どこでどの程度秘密を明かすかなど)だろう。これには先行作品という見本はあるが、それはその作品にのみ当てはまることも多い。見本を参考に、最終的には自分で考えることになる。

 

※本記事は「公募ガイド2018年4月号」の記事を再掲載したものです。