第48回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「孤独」結果と講評


1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第51回 [ 寄生 ]
10/1~10/31(23:59)
■第52回 [ ゲーム ]
11/1~11/30(23:59)

孤独

今回の課題は孤独。どうもみなさん意外に苦労していたようだ。「孤独」が何なのかわからない? それとも実はみんなそんなに孤独ではない? 「現代人の孤独」って何?


最優秀作は吉川歩さんの「約束」。四十年近く働いた製薬会社を退職した「私」。「納会」にも誘われたが、行く気になれない。結婚もせず、男性中心の職場で働きつづけた「私」は孤独が身に沁みる。思い出すのは、唯一信頼できた上司の「友杉さん」だ。他社に転職するとき、「また一緒に仕事をしよう」と言ってくれたのに、なんの連絡もなかった。そして家に帰ると、なんと「友杉さん」が亡くなったという報せが届いていたのだ。葬儀に参列した「私」は、そこで意外な真実を知る……感動的なラストでした!


月坂亜希さんの「ここに愛が流れているとして」も、期待が高まるタイトルです。なんとこの小説で「流れている」のは弁当。「わたし」の目の前をベルトコンベアに乗った弁当が流れてゆく。「わたし」の仕事はそこに食材を詰めてゆくこと。そんな日々が続いてゆく。「わたし」はなんとか専属モデルになれそうだったのに失敗。いまはこの仕事をしている。そして、「廃棄の弁当」を食べながら、母と食べた弁当を思い出す。「弁当」に詰まっているのは……いいお話です。もう一ひねりあれば読み応えあった。惜しいなあ。

青川倫子さんの「令和のお立ち台」、タイトルが素敵ですね。意味がわからないけど。舞台は会社の屋上で、なんと飛び降り自殺をしようとしている男がいたのだ。集まって来る人々。真面目そうな男が自殺志願者に説得を試みる。絶望した男は、周りの連中に勝手にあだ名をつけながら、会社を解雇され、家族も恋人もいない絶望的な状況を口走る。そして「僕には居場所なんてない」と泣き出すのである。やがて「私」は舌打ちして、その男の前に出る……ここから啖呵を切ってゆく姿がおみごと。でもオチが単純すぎました。

齋藤倫也さんの「魂」の主人公は「悪魔」だ。魔方陣を描き「彼」に呼び出される「悪魔」。大した用もないのに呼びつける「彼」に「悪魔」はうんざりしている。でも「魂を売り渡す正式な契約」がまだなので我慢していたのだ。だが限界に達した「悪魔」は、怒り始める。「オレ様の力」がなかったら、お前なんか無に等しいと。するとどうだ。「彼」は「悪魔」に謝るのだ。なぜ? すると「彼」はその理由を告白する……うーん。その理由もオチも予想できてしまうんだけれど。もう一ひねりほしかったです。

香久山ゆみさんの「アパートのさえずり」は、人が苦手で、流れ流れ、築五十年以上の木造アパートにたどり着いた「私」のお話だ。「私」は窓を閉め、家の中でもイヤホンをして音楽を流す。「世界から隔絶する」ために。ところが、どこからか音が聴こえてくる。「ピッピピピピピ……」。なんと鳥の声だ。近くに巣があったのだ。ずっと耳をかたむける「私」。やがて雛が生まれ育ち、巣立ってゆく。あんなに熱心に聴いていたのに。また孤独に戻ってしまった。すると、また鳥の声が……。オチがちょっと弱かった。惜しい。

ナラネコさんの「孤独なおばあさんの話」の語り手は、ベテランホームヘルパーの「私」。「私」の仕事先には「安田さん」という気難しいおばあさんがいて、担当ヘルパーは次々代わっていた。仕事が始まると、予想通り「安田さん」は些細なことにも難癖をつける。心が折れそうになる「私」だったが、掃除中「長身の若い男性」と「寄り添って微笑む可愛らしい女性」の写真を見つける。「安田さん」は「私と昔の恋人」だと言うのだ。人が変わったように「恋人」の話をする「安田さん」。やがて……予想通りすぎるかな。

深谷未知さんの「白昼夢」は、孤独な「私」のモノローグだ。人と関わりを断っているわけでもないのにどこにも友人がいない「私」は、ぼんやりとバスに乗っている。そして、以前、高校生の頃にも同じように、バスに揺られて、偶然同級生の女の子が乗っているのに気づき、後を追いかけたことを思いだす。彼女はバスから降り、橋の途中で立ち止まり、川を見おろしていた。なんだか孤独そうだった。そして気づくと「私」はその橋にたどり着いている。すると近くの橋に誰か女性の姿が……。その先の展開が曖昧だったか。

澄瀬理名子さんの「ホワイトバースデー」の主人公は「三十三歳の辻井咲子」。半年前に彼氏と別れた。今年の誕生日どうしよう、と思っていたら「上司の相葉」から「一階の地下倉庫前」に来るよう言われる。倉庫での仕事を命じられたのだ。「咲子」は仕事を始める。なかなか終わらない。誕生日になっても終わらないかも。心配していると、案の定、無理だった。けれど、「相葉」が気を利かして、午前で帰ることを許してくれる。そんな「相葉」に「咲子」は……。うーん、あまりに淡い話で「孤独感」はなかったかも。
■第51回 [ 寄生 ]
「寄生」といえば「寄生虫」の「寄生」です。なにかにくっついて、なにかに依存して、なにかの栄養を吸収して生きてゆく。自分でもなにもせずに。「この寄生虫!」といわれて喜ぶ人いませんよね……。
■第52回 [ ゲーム ]みなさん「ゲーム」はやりますよね。スマホですか、プレステですか、オンラインでもやりますか。ボードゲームも楽しいですね。「恋愛」をゲームだっていう人もいます。となると、世の中にあるものはみんなゲーム?
■第51回 [ 寄生 ]
10/1~10/31(23:59)
■第52回 [ ゲーム ]
11/1~11/30(23:59)
本文2000字程度。縦書き。
(テキストデータは横書きでかまいません)
書式は自由ですが、A4判40字×30行を推奨します。
WEB応募に限ります。
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(ファイル名は「第○回_作品名_作者名」とし、ファイル名に左記以外の記号類は使用不可)
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本文以外の字数は規定枚数(字数)にカウントしません。
Wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
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作品は未発表オリジナル作品に限ります。
入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属します。
AIを使用して書いた作品はご遠慮ください。
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
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第51回 2026/1/1、Koubo上
第52回 2026/2/1、Koubo上
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佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※最優秀賞が複数あった場合は按分とします。
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