シンボルマーク&ロゴマーク 入賞の秘訣
「なぜ、公募を開催するか?」その意味を考えて応募しよう
シンボルマーク公募が最も盛んに行われたのは、2000年代中期。当時は、市町村の合併が各地で行なわれ、それに伴う新しい市章、町章の一般公募が盛んに行われた。2010年を過ぎると、市町村の合併、整備は一段落したものの、地方自治体の開催によるシンボルマーク&ロゴマークの公募は、安定した数をキープしながら全国で行われている。変わってきたのはその内容だ。
市章や町章といった、「それ以降、長年使われていくもの」の公募開催数は現在、やや落ち着きを見せている。代わりに、自治体やその周辺団体が社会的な運動を推進するにあたり、シンボルとなるマークやロゴを一般公募するケースが増えている。これらは、その計画が長くても数年だったり、同時期にさまざまな運動が平行して進んでいたりするので、これからもある程度の数は期待できるだろう。
シンボルマーク&ロゴマークの公募がなぜ、地方自治体のみならず、一般の団体や企業、教育機関などからも開催を好まれるのか。それは、2000年代中盤の新しい市町村の市章、町章公募において、応募のリアクションの良さに端を発しているのかもしれない。応募作品の数が、予想より多かったのはもちろんだが、応募作品のさまざまなイメージを見て、「われわれの団体や活動は、こんなイメージで捉えられているのか」と開催者側が認識できる、ある意味マーケティング的なスタンスも開催理由に含まれているからかもしれない。実際、主催者を取材すると、そうした「意義」を大切にしているという声は少なくない。
大切なのは視点と主張 プロ相手でもあきらめないこと
シンボルマーク&ロゴマーク公募の現状に話を移そう。前述したように現在、開催数は年による上下はそれほどなく、常にある程度の数がキープされている。賞金レベルは、最も盛んだった頃に比べるとやや下降気味。3万〜10万円が最も多いゾーン。最も高いレベルで30万円といったところだろう。
ただし、チャンスは最盛期よりも確実に増えている。そう言いきれるのは、近年はこのジャンルの個々の公募の応募数が絶対的に減少しているから。最盛期には、人気の公募なら2000超は当たり前、5000を超えるものも少なくなかったが、現在は、応募数が1000を超えるものは数える程度。賞金のレベルにもよるが、400〜700の間が最も多い。
ライバルは多くない。そして作品を、より「見てもらえる」ことは間違いない。だからこそ、主催者が求めている「開催の意味」をしっかりと理解することが大切なカギと言える。主催者はどんな団体なのか? その活動でどんなことを訴えたいのか? まずはそれを知ることから始めたい。その上で、
「あなた方の活動を、私はこんなイメージで捉えています」という主張。それをわかりやすく伝えられ、それが主催者の求めるものと合致すれば、入賞の確率は飛躍的に高くなるに違いない。
「シンボルマーク」と「ロゴマーク」の違いは、「ロゴマーク」には必ず文字が入っている、という程度。どちらにしても本音を言えば、多少値は張っても、著名なデザイナーやイラストレーターに発注した方が主催者はラクだ。それでも公募を開催するのは、一般からのさまざまな「視点」と「主張」が見たいから。
もちろん、応募者にはプロのデザイナーやイラストレーターも多いジャンルだが、「どうせプロには勝てない」とあきらめてしまうのは絶対に早計だ。
北海道ガーデンショーロゴマーク:グローバルな感覚とイベントの目的への理解度
「北海道ガーデンショー」は、北海道内各地で豊かな「北海道の庭園文化」が育まれていくことを目指して、6月2日から清水町「十勝千年の森」で開催される。そのロゴマーク募集は昨年夏行われた。
主催の北海道ガーデンショー実行委員会に聞いた。
「当初は、地元のデザイナーにロゴ制作の依頼をしたんです。さんざんブラッシュアップもして、いい作品にはなったんですが、そうなるとさらにいいものが見てみたくなって。それで思い切って公募に踏み切りました。こちらとしては賞金もちょっと頑張って(笑)。
賞金のレベルもあって、全国のプロのデザイナーさんからたくさんのご応募をいただきました。みなさん、さすがに作品自体のレベルは高いのですが、イベントの趣旨をご理解いただいていないように見えるものも少なくなかったですね。約900点の応募を、1次で100まで絞り、2次で30まで、3次で5作品に絞り、最終審査。最終に残ったのはみなさん30代の方でしたが、小学生から80代の方まで幅広くご応募いただきました。
選ばれた冨田さんの作品は、イベントへの理解が深かったことと、全体のバランスの良さ。そして何よりグローバルなセンスに、すごく才能を感じました。北海道の方だったのは本当に偶然。ロゴマークは名刺、ポスター、パンフなどに使用していますが、とても好評です」
海外からの応募も多かったこの公募。入賞のキーワードは、「グローバル性」と豊かな北海道の自然への「理解度」だったようだ。
世界農業遺産「能登の里山里海」ロゴマーク:使いやすさと親しみやすさはロゴ・シンボルの重要課題
国内で初めて世界農業遺産に認定された「能登の里山里海(石川県羽咋市以北の能登半島の里山里海)」。その浸透と、次世代へ引き継ぐ機運を推進することを目的として、世界農業遺産活用実行委員会が昨年の11月を締め切りにロゴマークを募集した。委員会の石川県環境部里山創成室に話を聞く。
「100点ぐらいを予想していたので、応募数の多さには驚きました。選考にあたり、特に重視したのは、『能登の里山里海の意味が込められているもの』、『印象に残るもの』、『世界農業遺産にふさわしい格調があること』の3点。審査員5名が1次で23作品、2次で6作品まで絞り、最後は、能登の8市町が、6作品の中で良いと思う作品に投票し、最優秀作品1点を選定しました。
『里山と里海』がテーマということで、山と海の風景をデザインした作品が多かった中、山と海を人で表現した受賞作品は斬新であり、元気な里山里海のイメージにぴったりだったと思います。また、モノクロでの使用や、縮小し名刺に、拡大して看板に使うなどの用途も考えられ、いろいろな場面で使いやすいデザインだったことも大きかった。大変親しみやすいと好評をいただいていて、ロゴの中の2人に名前をつけてはどうかとの意見もあり、今後の検討課題になっています」
「親和性」と「ユーティリティ」。これもロゴ公募の大きなキーワードであることは間違いない。
※本記事は「公募ガイド2012年5月号」の記事を再掲載したものです。