公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

人は何歳まで作家デビューできるか3:受賞者の年齢について主催者に聞いてみた

タグ
小説・シナリオ
小説
バックナンバー

実年齢より作品の質を重視

受賞者の年齢について、いくつかの文学賞の主催者に聞いてみました。「日本エンタメ小説大賞」(主催・日本エンタメ小説大賞実行委員会)には18歳~80歳までの応募があったそう。この賞には受賞作品の映像化と受賞者のプロモートという2つの特色がありますが、映像化に至るためには「売れる本」でなくてはならず、「売れる本」であれば年齢は関係ないとのことです。
「ゴールデン・エレファント賞」(主催・「ゴールデン・エレファント賞」運営委員会)では、過去3回、60歳以上の受賞者は出していませんが、これについて、
「本賞は世界に通用する日本の小説を発掘するのが目的。最終選考員に海外の編集者が入っていることもあり、分かりやすくエンタメ性の強い作品が望まれる傾向がある。シニア世代の応募作によく見受けられる自叙伝的な作品や純文学のような作品が最終選考に残るのは難しい」
とコメントしています。
「野性時代フロンティア文学賞」(フジテレビジョン/角川書店主催)の受賞者
は20代~30代など若い世代が多いそうですが、年齢で不利になることはないとのこと。担当者によると、「賞創設時に30代の女性をターゲットに想定した『青春文学賞というタイトルを冠していたために応募者も若い世代が多くなったという経緯があり、『フロンティア文学賞』に名前が変わって4回目となった現在もこの傾向は続いているのではないか」、しかし、これから伸ばしていけるだろう芽を見つけて、新しい作品を生み出していこうという賞の目的に沿っていれば、「受賞者の年齢や実働期間の短さについては考慮しない」とのことです。
また、シニアについては、「若い人でも1作品を書き上げて力尽きてしまい、2作目に至らないことも。シニアの方はそれまでの豊富な人生経験を糧に多くの作品を書きためておられ、受賞後、短いスパンで次々と作品を生み出していただける可能性もあるのでは」とコメントしています。

「江戸川乱歩賞」を主催する日本推理作家協会では、「選考委員にはプロフィールを付けずに作品を渡しているので、年齢が選考に影響することはない」、また実働期間の短さについては、「そのような理由から年齢が考慮されることはない」としています。
「やまなし文学賞」では今年も62歳、63歳の方が受賞。主催のやまなし文学賞実行委員会では、今後もシニアの受賞はあると見ているそう。もちろん、年齢が選考に影響することはないとのことです。
第12回「坊ちゃん文学賞」は1057編の応募のうち、60歳以上が151名。
高齢者の受賞者も出しています。
「さきがけ文学賞」の応募者、受賞者の半数以上はシニア世代だそうです。

取材を通じて

受賞者の年齢が気になるかどうかは、受賞後に受賞者とどう関わるかによります。たとえば、受賞後も長く稼いでもらいたいと考える出版社なら、積極的には高齢者は採らないでしょう。
しかし、今は作家の実働年数はせいぜい10年ですし、新人を育てる誌面も少ない、それなら一発屋でも即戦力を待ったほうが効率的という考えが主流ですから、年齢は関係なくなりつつあります。
受賞後は受賞者とほとんど関わりがなくなる文学賞、たとえば、単発の懸賞小説、自治体文学、地方文芸については、もともと年齢を考慮する理由がなく、高齢者が受賞する割合も高くなっています。
また、大手出版社によるメジャーな文学賞に気後れした高齢者は、自治体文学、地方文芸に流れる傾向があり、そうしたことからもこれらの文学賞では高齢者の受賞者が(比較的)多くなっています。
ライトノベルに関しては、活躍する作家の多くが30~40代ということ、また、年に数冊というような量産が求められることから、高齢者には相当なハードルがあると見ていいでしょう。
ただし、どの文学賞にしても、実年齢は関係なくなってきています。受賞しないとすれば、実年齢より、作品に出てしまった悪い意味での年齢のほうを問題とすべきかもしれません。

受賞者と年齢まとめ

  • 受賞後、受賞者と関わらない主催者は受賞者の年齢は問わない。
  • 新人の発掘を目的とする新人文学賞でも実年齢は問わなくなってきている。
  • ライトノベルについては高齢者の受賞はかなり難しい。
  • 実年齢より、受賞に値する作品であるかどうかのほうが重要。

 

※本記事は「公募ガイド2013年5月号」の記事を再掲載したものです。