ネットの海で物語る【第20回】小説を書き始めると毎日が変わる
小説を書き始めると
毎日が変わる
Kouboを利用している皆様こんにちは。蜂賀三月です。
前回川柳にハマっていると話していましたが、今は短歌にハマっています。
さっそく短歌の指南本や歌集など読んでみちゃったりして。その世界の深さと広さに驚かされるばかりです。なんだか蜂賀が飽きっぽく思われるような挨拶になりましたが、実際に飽き性ではあります。
そんな私でも小説には2020年の10月からずっとハマりっぱなしです。3年ちょっとですが、小説のことを考えない日はもはやありません。
それは、小説というものが私の日常の奥深くまで入り込み、取り除くことすらできなくなったからです。
今回は、小説を書き始めて変わったことについてお話します。
なんとな~く小説を書いてみたいな、興味あるな、という方は参考にしてみてください。
何気ないことも
楽しめるようになる
小説は、自身の経験を作品に落とし込むことができます。
特に書き始めたばかりの頃は自分が経験したことや感じたことを題材にするだけで、作品の解像度がぐっと上がります。珍しい体験や職業の小説を書いたら面白くなるでしょう。
それだけでなく、ダイエット目的で嫌々している散歩で訪れた公園、つまらなそうに思えた井戸端会議、苦手な人からの干渉……そういうものもすべて作品作りに活かすことができます。
「今のこの状況を文章にするならどう表現するだろう」
「この会話の奥に実は裏が隠されているとしたら?」
「苦手な人だけど、こんな人が小説に登場したら主人公の魅力が引き立つかも」
そんな風に考えると、日常のマイナスだったことさえ作品作りに昇華できちゃいます。
これってものすごいことじゃありませんか? ネガティブなものをプラスに変える力が小説……ひいては創作にはあります。
新しいことへの挑戦
以前までは「気になるけど挑戦しなかったこと」にも手が出しやすくなりました。
冒頭で書いた川柳や短歌もそうです。私がもしすぐにやめてしまったとしても、なにも結果が出なかったとしても、この経験は無駄になりません。
今後小説内で短歌を書く人物が出てくるかもしれません。そのときに、短歌について調べ学び、自分で創作した経験は如実に文章に現れるのです。
経験が浅くても、0と1では大きな違いがあります。
今まで書いた作品のなかでその事実が十分すぎるほどわかったので、フットワークが軽くなりました。
今まで行ったことのない場所に行こう、知らない人と話してみよう、とりあえずなんでもやってみようと思えると、毎日が楽しくなります。ただ、時間が足りなくなるのがちょっと辛いところですが。
これだけ書くと小説執筆にはいいことばかりのように思えますね。
もちろんそうではありません。
あくまでも私個人の感覚ですが、デメリットもあります。
純粋に物語を楽しめなくなる
小説はもちろん、漫画や映画・アニメ……そのようなものに触れるとき、どうしても「作家視点での自分」が介入してくるようになります。この構成は勉強になるとか、このキャラがいるからこのキャラの魅力が引き立つんだとか、自分ならこっちの展開にするかも……だとか。もちろん、その視点があっても十分に物語を楽しめるのですが、没入する感覚は以前より減ったように感じます。
家なんかで映画を見ていても、作品から得られる閃きがあったときは一時停止してすばやくメモをしますから。メモしないと忘れちゃいますし(笑)。
同じような方、きっと多いんじゃないでしょうか?
物語たちに対してまた新たな楽しみ方を見つけた……と言い換えてもいいのですが、そこはデメリットかもしれないな、と感じます。
自分と向き合うからこそ
出てくるしんどさ
どんなフィクションを書くにあたっても作者の考え・自分の成分が入ってしまうことがあります。 作者と作品はもちろん別物なのですが、テキストを生む過程で自分自身を見つめる機会はとても多いです。 人によっては自分の辛い過去や経験と向き合うことにもなるし、トラウマを掘り起こすきっかけにもなり得ます。 辛い経験・過去を作品に活かせると捉えることもできますが、それをもとに作品を書くのは大変な覚悟とエネルギーが必要です。 決して執筆は楽しいことばかりでありません。命を削るような思いで書く場面は、長く小説を書いていると必ず出てくるでしょう。
小説を書き始めると
毎日が変わり、
そして人生が変わる
私は小説を書くことで毎日への向き合い方や考え方が変化しました。そして、過去との向き合い方も変わっていきました。ありがたいことに、私はその延長線上に商業デビューがあり、今ではこのように文字を書く仕事までいただいています。
年齢も性別も環境も書き始めた時期も関係なく、小説を書くという行為の先には無限の可能性があると、私は実感しています。
全ての人に「小説の執筆がおすすめ!」なんて嘘は書けませんが、私は小説と出会えたことが幸せだし、小説を書いている自分がいることも誇らしいです。これからも続けていきたいと考えています。
今回は小説を書いて変わったことについて、私の経験をお話しました。
今、小説を書きたいと燻っている方がいるのなら、まずは1行書いてみてはいかがでしょうか。その先に、無限の物語とあなたの可能性が待っているかもしれません。
さて、突然のお知らせとなり申し訳ないですが、次回でこの『ネットの海で物語る』は最終回となります。最終回ですので、普段のエッセイと合わせてなにか質問があれば答えられる範囲で答えたいと思います。Xやつくログ、下記応募フォームなどから気軽に質問してくださいね! どうぞよろしくお願いいたします!
※次回は最終回! 4/17(水)更新予定です。■profile
蜂賀三月 (はちが みつき)
小説家。ショートショート、児童書、YA小説をメインに執筆活動を行う。著書に『絶対通報システム~いじめ復讐ゲームのはじまり~』(スターツ出版)、 短編小説収録『5分後に奇跡のラスト』(河出書房新社)など。小説情報メディア
「WebNovelLabo」 を運営。