ツイートする短歌1: S N Sが拍車をかけ、 短歌がカジュアル化!
ケータイと親和度大:短歌人気にSNSが拍車をかけた!
短歌が盛り上がるのは、戦後になって3回目。
「60年代は佐佐木幸綱さん、90年代は吉川宏志さん、梅内美華子さんが出てきてスポットを浴びた時代。今回はそれ以来」(角川「短歌」編集長・石川一郎さん)
今、短歌が人気なのはインターネット、特にSNSが一因。
「若い人はいつの時代も表現欲求が旺盛で、そんな中、短い詩である短歌は作りやすく、俳句と違って思いを述べやすいことから若い人の表現欲求を満たす。さらにSNSはリプライ機能もあるから、それによって感想や批評が容易に返ってくるのでモチベーションも高まる」
短歌ファンはインターネットをどう活用しているのでしょうか。
一つ目は、ツイッターやフェイスブック、ブログなどで短歌を発表し、「いいね」や感想をもらって楽しむパターン。
二つ目は、インターネット上にある短歌投稿サイト、歌会サイトに投稿して楽しむパターン。
三つ目はリアルな歌会をやるにあたり、SNSを通じて参加者を募るパターン。年間40回もの歌会に参加するという相田奈緒さんもSNSを活用している。
「SNSで歌会の告知をみつけて参加しています。私自身は私を含め3人で『神保町歌会』を開いていますが、ツイッターで告知をしています。毎回新しい参加者がいて、いろいろな意見を聞けるのが楽しいですね」
短歌はここのところ少しずつ人気が高まっていましたが、これにインターネットが拍車をかけたというのが現在の歌壇。こうした裾野の広がりは今後も続きそうだ。
短歌投稿サイト・歌会サイトも活況
短歌人気を背景に、気軽にいつでも投稿できる短歌投稿サイトや歌会サイトも増えている。
ユーザー層はどのサイトも20~30代が中心。
女性が多く、規模は大小さまざまながら6000人ものユーザーがいるサイトも。
WEBのいいところは、地域を問わず、時間も問わず、いつでもどこでも投稿できるところ。
「『うたよみん』はアプリで投稿できるので、家事や通勤の途中でも、その瞬間の感動を歌にすることができます」(「うたよみん」今井さん)
短歌を投稿して評されたいという層は確実に存在しますが、歌会や新聞歌壇となるとハードルが高いという層には、短歌投稿サイトや歌会サイトはうってつけのようだ。
短歌投稿サイト・歌会サイトの問題
インターネットは便利ですが、顔をつき合わせない弊害もあります。
「まれに誹謗中傷の投稿はありますが、すぐに削除等の対応をしています」(「うたのわ」高橋さん)
「よくない点を指摘された側からすると、言葉の選び方次第では不快な気持ちになるケースはあるようです」(「うたらば」田中ましろさん)
「短歌特有のトラブルはありませんが、一般的なインターネットで起こり得ることには気をつける必要があります」(「うたよみん」今井さん)
文字で書くときつい印象になりがちです。ネットでやりとりするときは悪くとられないようにする配慮が必要ですし、また不快に思ってもかっとせず、大人の対応をする必要があります。
大学生に短歌ブーム:大学短歌会の数が倍増!ライトユーザーも増大
「大学短歌会は全国に30ぐらいあると思います。ぼくが大学に入学した数年前は15団体でしたので、今は倍になっています。短歌は今、伝統文芸というより、サブカル的な扱いになっています」
と言うのは、早稲田大学短歌会前幹事長の谷村行海さん。
短歌はより身近な存在になっており、本格的にはやっていなくても、インターネットで気軽にやっている層も少なくない。
「短歌のハッシュタグのあるところに投稿したり、リツイートしたりしている人もいます」
これも短歌の楽しみ方ですが、短歌は本来、一堂に集まって歌を詠んで評される座の文学。
「自分の評だけだと見方が偏ってしまいますが、いろいろな人の意見を聞くことで歌の新しい魅力を発見できます。自分の作品を評されるときも、意図とは違う読み方をされることがあり、作者と読者のギャップが勉強になります」
ニコニコと月刊「短歌」がコラボ:動画配信のニコニコと、月刊「短歌」がコラボ
「短歌」編集部では、一昨年から「大学短歌バトル」を実施している。これは大学短歌会対抗の歌合で、予選は短歌10首を提出。本戦では8短歌会による歌合がトーナメント形式で行われる。
試合は、まず双方の方人(歌の作者)が1首ずつ詠み、各チーム念人(応援する人)が自チームの歌を援護、相手チームの歌を批判し、議論を有利に導く。それを受けて3人の判者が赤白どちらかの旗を上げて勝敗を決する。
「若い人たちは批評やプレゼンがうまいですね。歌合は平安時代からあり、大学短歌バトルはそれを現代に復活させたものです。出場するために短歌会を作って大学に
申請したところもあります。野球の甲子園みたいに年に1回の学生の目標となり、研鑽の場となればうれしいです」(前出・石川さん)
本戦はニコニコで放送され、今年は岡山大学が優勝しました。
ニコニコと言えば、この2月26日、ドワンゴ主催、「短歌」編集部監修で、現代歌人発掘プロジェクト「『歌ドカワ』短歌アワード」が開催されています。
605首の応募作品の中から審査員3人が「自由題」「リア充」のお題各1首を選出し、「ニコニコ生放送」で発表されました。
「視聴者が2万人いて、画面に流れるコメントを見ていると、短歌をあまり知らない視聴者が見てくれたようです。かりに自分は作らなくても、読むのが好きというような短歌の読者も増えればいいなと思っています」
※本記事は「公募ガイド2017年5月号」の記事を再掲載したものです。