あなたとよむ短歌 vol.50 テーマ詠「宇宙」結果発表 ~短歌の続けかた~(1/3)
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「宇宙」結果発表
~短歌の続けかた~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「宇宙」の結果発表です。連載50回にふさわしい壮大なテーマです。
宇宙についてさまざまな角度から詠まれた、ユニークな作品が多かった印象です。ある意味で身近であり、ある意味では遠く、想像力をかきたてられる題材なのかもしれません。
今回は、投稿者の方からよせられた質問もご紹介しています。ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。
きみの小さな惑星でいる
みずから輝いている恒星の周りを回るのが惑星です(つまり、地球は太陽の「惑星」ですが、月は地球の「衛星」です)。この「きみ」はきっと輝いて見えるのでしょう。「きみ」の側に常にいる自分を惑星にたとえています。
一緒にいるために、日々少しずつ軌道修正をしているんですね。恋人でも友人でも親子でも、誰かとともに生きることは、すなわち軌道修正の連続なのかもしれません。運命的なものを感じさせつつ、親近感のわく一首です。「きみ」の方でも同じように考えて、ほどほどに軌道修正を試みてくれていたらうれしいなと思います。
続いて、優秀賞2首です。
満月だよと言い張る君と
情景がありありと思い浮かびます。満月の前日の月は、たしかに満月と変わらないほど丸く見えます。「君」と作中主体(短歌の視点、語り部となっている人物)は、満月か一日前かと、お互いに主張しながら月を鑑賞できる関係性だとわかります。親密で尊い間柄です。
「満月だよと言い張る君と→満月の一日前に月を見た」ではなく、倒置法を用いることで、最後に種明かしのように「君と」という言葉が出てきます。
また、日本語は最後にくる言葉にインパクトが生じ、重心がおかれます。繰り返される「満月」という言葉にも負けないほど、最後に「君」にフォーカスする点に、深い愛情を感じる作品です。
そう泣いた織姫は綺麗で
作中主体が彦星だとしたら、これは別れ話ですね。「自信がない(から別れたい)」ということでしょう。よく考えたら、年に一度しか交流できない織姫と彦星は、別れ話をするにもそのタイミングしかないんですね。
もしかしたら織姫の友達が悩みを聞いているのかな、とも考えましたが、泣いた織姫について同情するよりも「綺麗」などと表現している点に、やはり恋人である彦星の視点ではないかと読み取りました。
短歌は約31音と情報量が限られており、その読解は人によっても異なるものですが、けれども一つ一つの言葉の選択によって伝わる情報は大きく異なります。