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2019年9月号特集SPECIAL INTERVIEW 藤平久子さん

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撮影:賀地マコト

公募ガイド9月号の特集「本気でシナリオ教えます!」では、脚本家の藤平久子さんにご登場いただきました。
誌面に入りきらなかったインタビューをご紹介します。

藤平先生インタビュー

――シナリオの学校を出たあと、すぐに脚本家デビューできましたか?

藤平先生:書くことを仕事にしようと決めて、フリーライター(雑誌記者)になりました。

――それはどのようなツテで?

藤平先生:知人の紹介でした。月刊誌のテレビ欄、料理や映画のコラム欄などの仕事をしながら、脚本の勉強を続けました。

――その後、24歳でデビューします。

藤平先生:当時、「金曜エンタテイメント」(フジテレビ)という2時間ドラマがあり、そこで「女医レイカ」(主演:名取裕子)の脚本を書かせて頂けることになりました。

――その後、鳴かず飛ばずの時期が続くのですよね。

藤平先生:映画は、100本企画があっても、1つやるかやらないかという世界なので。プロットのお仕事ばかりで、なかなか脚本まで進めない時期が続きました。ようやく脚本まで書かせてもらえても、採用にならなかったりもしました。

――なかなかつらい時期が続いたわけですね。

藤平先生:そうですね、そんな中で結婚、出産を経験しましたが、脚本は書き続けていました。

――脚本家に必要な資質は?

藤平先生:体力だと思います。執筆作業は何時に始まって何時に終わるかなんて、自分でもわかりません。締め切りも撮影のスケジュールに左右されますし、生活は不規則になりがちです。

――映画やドラマは集団で作りますので、そのつらさはありますね。

藤平先生:その分、1人では思いつけないアイデアが盛り込まれたり、脚本では単に「公園」や「居酒屋」だった場所が、想像以上にステキな場所だったり。セリフも、役者さんがいいセリフを加えて下さったりすることもあって、オンエアを観て、感激することが多いです。 皆で力を合わせて「最善」を尽くす、「団体競技」のような楽しさです。

インタビューを終えて(編集後記)

よくも悪くも、自己完結できない

シナリオライター(脚本家)とライター(記者)には、似たところがあります。

類似点1:締切がある

映画やドラマには公開日があり、新聞や雑誌には発行日があります。これはずらせません。「ちょっと体調が悪いので、次号の公募ガイドは発売を3日延期できません?」なんて言ったら殺されます!

撮影が天候で順延になっても、役者のスケジュールの都合で伸び伸びになっても、デッドラインは変えられませんから、まあ、徹夜してでもやるしかないわけですね。

類似点2:広告主がいる

その昔、銀行員が横領した事件があり、そのことを某新聞社は知っていたのですが、問題の銀行がメインバンクだったためにスクープできなかったということがありました。
そういう大人の事情とか忖度とか、ままありますね。

映画やドラマでも、たとえば、スポンサーが洗剤の会社だったとして、その場合は洗剤を批判するようなセリフは避けるはずですね。中身を削るわけです。
逆に、スポンサーや撮影協力の関係で、土地の名物を入れなければならないということもあるでしょう。この場合は中身を足すわけです。

類似点3:得意なことだけやるわけではない

たとえば、雑誌ライターが「仮想通貨」について取材してほしいと言われたとして、「仮想通貨なんてよく知らないし、興味もないからやりません」と断ることもできますが、好きな仕事しかしなかったら食っていけませんので、プロのライターはそのつど調べて、勉強して、なんとかこなしていきます。

脚本家も同じで、「AIをテーマになんか企画して」というオーダーがあったとして、「面白くなさそう。やだ」なんて言っていたらやっていけません。「よく知らないけど、面白そう」となんにでも興味を持つ人でないとだめですね。
 

脚本家に必要な、資質と環境とは?

脚本家になるためには、資質と環境が必要です。
資質というのは、とにかく脚本が書きたいという意欲ですね。好奇心と言ってもいいです。
もちろん、創作力や発想力も必要ですが、その前に、アグレッシブでポジティブな気持ちがないと何も始まりません。

 

たとえば、全く興味のない分野の仕事がまわってきたとき、
「やりたくねえ、誰かやってよ」と思うか、
「チャンスだし、自分の引き出しになる」と食いつくか。
伸びるのは後者です。

 

脚本家の場合、資質だけでは難しい面があります。
自分だけのペースでは書けないからです。
撮影は深夜に及ぶことも少なくないそうですが、なんらかの都合で、あるシーンの舞台が「海辺」から「湖畔」に変わったとします。
当然、シナリオも変わってきます。
脚本家が現場にいれば、その場で書き直してもらうでしょうし、いなければ連絡して、
「設定が変わったので、至急書き直して。できれば今日中」
と言われたりします。

 

だから、フットワークがよくて、迅速に対応してくれる人が求められます。
電話してもつながらないとか、平日は仕事しているから無理という人の場合は、もう次の仕事はないかもしれません。

しかし、脚本家がいなければ映画もドラマも作れませんから、確実に需要はあるのですね。
プロになるにはハードルが高いところはありますが、逆に言えば、比較的ライバルが少ないので、本気の人にはチャンス! 本気の人しかなれない仕事でもあります

 

藤平久子(脚本家) ふじひら・ひさこ

大阪生まれ。雑誌記者を経て脚本家に。「いよっ!弁慶」「魔法×戦士マジマジョピュアーズ」「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」「探偵が早すぎる」など、脚本・共同執筆を含め作品多数。現在、NHKドラマ10にて「これは経費で落ちません!」が放送中!