せきしろの自由律俳句 第90回「テレビ」結果発表 (2/3)


第 90回 課題: テレビ
佳作
寂しさ救ったテレビ仰ぐ朝焼
(大阪府 昼寝女王 81歳)
朝ドラ見ながら血圧計る
(愛知県 河村 けい瑚 72歳)
テレビも飽きて元旦は夕暮れ
(千葉県 xissa 59歳)
旅先で見たテレビの続きは見ぬまま
(埼玉県 さっちも 52歳)
知らない土地のローカルニュースを見ている
(北海道 エリンギ 37歳)
一番いいところで母は桃を剥く
(福岡県 雨 34歳)
エンドロールの名が若い
(神奈川県 ごまだいふく 26歳)
電源を切ればまたひとり暮らし
(東京都 原茉梨花 25歳)
ラーメンすすりすすけたテレビ見上げる
(栃木県 チョウピン 74歳)
平日の昼の番組が過ぎていく火曜日
(東京都 めめめい 17歳)
再放送の女が泣く
(福島県 きりんのき 22歳)
映らないテレビに映る私
(兵庫県 日並 19歳)
ヤラセだと笑う父の背中
(熊本県 陽 16歳)
旅先で観る旅先で愛されているタレント
(埼玉県 古屋郁美 29歳)
修理に来た業者と相撲を眺めている
(大阪府 フルカワ 33歳)
小さくなった母がテレビの埃を掃う
(岡山県 ゆめみさえ 36歳)
音量の大きさが老人
(大阪府 石川聡 42歳)
黒い板が部屋を映している
(神奈川県 笛地静恵 68歳)
『寂しさ救ったテレビ仰ぐ朝焼』朝焼の色が広がる句。その色は少しだけ寂しさを和らげてくれる。
『朝ドラ見ながら血圧計る』朝ドラが時計代わりになることはよくある。出かける時間だったり、薬を飲む時間だったり。祖父母の家がそうだった記憶がある。
『テレビも飽きて元旦は夕暮れ』夕方のテレビはどこか間延びしていることが多いが、元旦は特にそうかもしれない。
『旅先で見たテレビの続きは見ぬまま』旅先のタクシーのラジオから聞こえてきたクイズにリスナーが正解したのかどうかもわからぬまま。
『知らない土地のローカルニュースを見ている』その地域の祭りを知る機会にもなる。
『一番いいところで母は桃を剥く』一番いいところなのに食器を洗う母親は戻ってこない時もある。
『エンドロールの名が若い』時の流れを知る時。容疑者の名が若いと感じる場合もある。
『電源を切ればまたひとり暮らし』テレビを切るや否や襲ってくる寂寥。現実に引き戻される感。日曜の夜は特に。
『ラーメンすすりすすけたテレビ見上げる』街中華感が沁みてくる句だ。
『平日の昼の番組が過ぎていく火曜日』まだその週が新鮮な月曜ではなく、週末まで長いと思い始める火曜をピックアップしたのが良い。