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夏井いつき直伝!初心者でも必ず一句詠める俳句の作りかた完全ガイド

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今、大人気の俳人である夏井いつき先生が、誰でも必ず1句詠める方法を伝授! センスも語彙も必要ありません! 楽しく俳句を始めましょう!

俳句って難しい? あなたのハードル、下げます!

公募ガイド読者にアンケートを行い、俳句への素朴な疑問を聞きました。特に質問の多かったものについて、夏井先生がズバッとお答えします!

俳句って難しそうです。切れ字とか季語とか……。

大事なことは1つだけ!
俳句にとって重要なのは「季語」だけです! 切れ字や字余りはテクニックの問題なので、初心者は気にしなくて大丈夫。なるだけ575の形になっていて、季語があれば立派な俳句です。

季語って、季節感のある言葉ならなんでもいいんですか?

季語はただの言葉ではないんです!
たとえば「桜」と聞けば春を思い浮かべ、さらには「出会いと別れ」まで想像することができますよね。そんなふうに多くの人が共通イメージをもっている言葉が季語なのです。そして長い年月をかけて「これは季語といえるね」と確立されていったものを集めたのが歳時記です。基本的には歳時記に載っているものを使いましょう!

俳句に現代の言葉は使ってはいけないんですよね?

話し言葉(口語)で大丈夫ですよ!
有名な俳句を見ると昔の書き言葉(文語)で書かれていることが多いですが、現代の話し言葉で作ってもちろんOKです。口語のいい句もたくさんありますよ。

俳句と川柳って、どんな違いがあるんですか?

季語を主役にしているのが俳句です
俳句はいつも「いかに季語を際立たせるか」を意識して詠まれています。川柳にも季語が入っているものはありますが、季語への意識の向き方が違います。

伝えたいことが17音に収まる気がしません!

考えすぎないことです
すべてを言わずとも伝わることは多くあります。悩みすぎずにどこか1つに絞ってみましょう。

5音+12音の型編 型にはめるだけでオリジナル俳句

俳句の作り方はいろいろあるが、初めに覚えてほしい基本の作り方「取り合わせ」を紹介していく。誰でも悩むことなく、しかもオリジナルな句ができる方法だ!

「5音+12音」の型にはめるだけ!

俳句は575の17音であるということはみんな知っているはず。今回はその575を、5+7、もしくは7+5の12音と、残りの5音に分けて作っていく。手順としては、12音のほうで自分の見たものや感じたことをつぶやいて、それに5音の季語を取り合わせるというやり方だ。夏井先生はこの12音のことを「俳句のタネ」と呼んでいる。

俳句のタネはどんなことでも構わない。俳句といえば季節の情景や風雅な景色を詠むものだと思っている人もいるが、そんな必要はない。あまり頭で考えすぎず、浮かんだものをそのまま12音にしてみよう。詳しいコツやポイントは次のページから説明していく。

そのあとに選ぶ5音の季語も、「絶対にこれ!」という正解があるわけではなく、5000を超えるといわれている季語すべてを知っておく必要はない。特集のP17には便利な「5音季語集」も用意している。まずは、俳句のタネに合いそうな季語を選んで、オリジナルな1句を作ってみよう!

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季語と俳句のタネの関係

響き合うことで見えてくる世界

読者のなかには、「俳句のタネから作って、そのあとに季語をつけるのはわかったけれど、なんでそれでいい句になるの?」という疑問を持つ人もいるだろう。

なぜいい句になるのか? 上記の例句を見てほしい。季語の「春風」は、春の暖かく柔らかい風が吹いている様子を表している。俳句のタネは「眼鏡をかけたままでまどろんでいた」という情景。この2つに、はっきりとした関連性はない。けれど合わさって1句になると、まどろみの心地よさや、春の光の穏やかさまでが感じられてくるだろう。

こうやって2つのものを合わせることで、それぞれが響き合ってよい句になるのが5音+12音の型なのだ。このように、2つのものが組み合わさり響き合うことを、「取り合わせ」という。5音+12音の型は「取り合わせ」のもっとも簡単な型である。

伝えたい思いは季語に託して

初心者の場合、「楽しかった」「悲しかった」などの感情を直接書くことは避けたほうがよい。感情は季語が語ってくれるからだ。

例句を見ると、「眼鏡したまままどろんで」いたときの感情を語るのが、季語の「春風」だ。「春風」という季語の心地よさと穏やかさが、作者の感情を伝えている。

伝えたい思いは季語に込めよう。

俳句のタネを探そう

「これ面白い! いいな!」と思ったものをどんどん12音にしていこう。

俳句のタネとは、12音での情景描写

さっそく12音の俳句のタネを探そう。12音は「5音+7音(上五+中七)」か「7音+5音(中七+下五)」のどちらかの形になればOK。どんなことでも俳句のタネになるので、どんどん書き出してみよう。夏井先生が小学生に俳句を教えたとき、「桃から生まれた桃太郎」を俳句のタネとして持ってきた子どもがいたそうだが、それだって俳句のタネになる。

また、初心者が迷いがちなのが、「季節って無視していいの?」ということだろう。たとえば今の時期であれば、なにか春らしいものを見つけて12音にしなくちゃいけないのではないかと思われがちだ。しかし、俳句のタネに季節感は必要ない。むしろ、12音の中に季語は入れないので、季節は関係しないほうがよい。

俳句のタネを探すときに一番いいのは散歩に出かけることだが、難しいときは家の中を歩いてみたり、過去に撮った写真を見返してみたりしよう。ふだんは注目しない部分にも目を向けてみると、面白い俳句のタネが見つけられるかもしれない。

俳句のタネを探すポイント

目の前のことでOK

どうしようかなと考えあぐねている人は、公募ガイドから顔をあげて目の前のものを見よう。たとえばマグカップがあったとしたら、「ギンガムチェックのマグカップ」など、どんなマグカップかをつぶやけばもう12音の完成だ。

ほかの人とは違うものを

どんなものでも俳句のタネになるが、「よい俳句のタネ」はもちろんある。それは、ほかの人とは違うあなただけのタネができたときだ。といっても、なにか珍しい体験が必要なわけではない。イメージや空想でも、自分が本当に感じたことでもいい。自分だけが見つけた、ほかの人が考えそうもないことをタネにしよう。

季語は入れない

季語はあとからつけるので、12音には入れないほうがのぞましい。ただ、初心者の場合はどの言葉が季語かなかなかわからない。明らかに季語だろうというものは避け、それ以外はあまり気にせずに作ってみよう。

日記や手帳から

うまくいかないときは日記や手帳を開いてみよう。書いてある言葉の中には5音や7音の言葉もあるはず。それらを組み合わせるだけで簡単に12音が完成。

音の数え方

チューリップを使って解説。「ゃゅょ」など拗音は数えないので、チュ=1音だ。長く伸ばす「-」は数えるのでチュー=2音。ちいさい「っ」は数えるのでリップ=3音となる。よってチューリップは合計で5音となる。

※本記事は2021年3月号に掲載した記事を再掲載したものです。