あなたとよむ短歌 vol.56 テーマ詠「天気」結果発表 ~気になっているけれど聞けないこと~(1/3)
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「天気」結果発表
~気になっているけれど聞けないこと~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「天気」の結果発表です。
毎日チェックしたり、思い出と結びついていたり、誰にとっても関わりのある題材だけに、幅広く魅力的な短歌が寄せられました。
どんな題材を短歌にするかは人それぞれですが、たとえば小説を書く人でも、ホラーが得意な人、歴史物、恋愛物が得意な人と、ジャンルや設定によって「強み」を出せるように「自分にとって良い短歌を詠みやすい題材」というのはありそうです。得意なものを知ってこそ、苦手なものにも手をだせそうですね。
今回は、投稿者の方からよせられた質問もご紹介しています。ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。
雲を目で追う僕を透かして
もしかしたら認知症か、衰弱によって意識が薄れているのか、母親でありながらわが子のことを認識できない状態なのでしょう。それでも、外出のとき、あるいは窓越しに空を見あげ、流れる雲を目で追えるのは、その人が生きている証拠なのかもしれません。
「僕を透かして」という表現は的確に状況を描写しつつ、とても辛く胸に刺さります。幼い子どもがセロファンや色つきガラスなどを透かして空を見ているような、そんな退行性、ある意味での純粋さやノスタルジーも感じます。
続いて、優秀賞2首です。
晩夏の恋は暑くて寒い
上句の「好きだって言いたいけれどやめておく」に対して、下句の「晩夏の恋は暑くて寒い」が比喩になっている一首です。比喩というのは短歌の醍醐味でもありますが難しいもので、あまりにそのまますぎると面白みがなく、自分にしかわからないような表現だと当然理解されません。このさくらんぼさんの一首は、その点がなんとも絶妙です。
「晩夏の恋」ということは、もっともアツい時期はすぎてしまったのでしょう。暑い、でも寒い、終わるのか終わるのかハッキリしない。どっちつかずな感じがたまりません。
ではないわたし面接へ行く
短歌は前半の575を上句(かみのく)、後半の77を下句(しものく)と言います。定型の短歌に読みなれてくると、読者はリズムが身についてきて、自然と上句と下句を意識して読むようになります。具体的には、なんとなくその間に息継ぎをしたくなる感じになるので、上句と下句の間に区切れがあるような短歌はリズムにのりやすく読みやすいものです。
このゆめみさえさんの一首は、そこを見事に逆手にとっています。上句の「雪道に足を取られるシンデレラ」で読者にシンデレラをしっかり想起させつつ「ではないわたし」と続けることで、読者は「シンデレラ……じゃないんかい!」と、漫才でいう「ノリツッコミ」のような形になります。雪で足を取られても、靴が脱げそうでも面接にいく「わたし」はかっこいいですね。