あなたとよむ短歌 vol.56 テーマ詠「天気」結果発表 ~気になっているけれど聞けないこと~(2/3)
それでは、佳作のご紹介です!
夕焼けが街も山をも染めていく今夜は鮭を焼いて食べよう
(下野如月さん)
夕焼けですべてがオレンジ色に包まれる情景からの鮭。あたたかい色にあふれた短歌です。焼いたらいい香りがしそうです。ほのぼのとした日常の様子に、つい鮭が食べたくなります。
台風が迷走している秋の日に仕事を辞める決心をした
(川村栄さん)
仕事を辞めるのが本当に正しいかどうか、その時点ではわからないもの。「迷走する台風」というモチーフが不安を象徴するかのようです。けれども、必ずどこかに進めるし、いつかは終わるもの。いろいろうまくいくといいですよね。
閉店のまいばすけっと薄曇りの街で獣のように眠る
(あやさん)
「まいばすけっと」はチェーンの小型スーパーです。大型店ではないので、間口を見る限り、古代の恐竜くらいのサイズ感ですね。閉店したばかりで、まだ看板などがそのままの店舗は、賑やかだったころの様子が残っていて、確かに眠っているだけのように見えます。
台風さんその県通ってくるのなら弟が元気かみてきてよ
(ももさん)
天気予報で台風の進路をチェックすると、日本地図全体がでてきます。「このあたりを通るのか」と、自分が住んでいる場所でない地域にも思いをはせるものです。台風に気軽に話しかけている表現も楽しい一首です。
「二時間後雨が降ります」わたしたち約束できる仲だったっけ
(宮瀬さん)
天気予報を見て「二時間後雨が降ります」って言われても、そんなあ、ねえ……と思いますよね。そんなこと言われても困っちゃう。面倒くささ、うんざりする気持ちが伝わってきます。