あなたとよむ短歌 vol.56【お悩み回答】~気になっているけれど聞けないこと~(3/3)
それでは、今回はもいただいたご質問に回答していきたいと思います。
短歌公募の場合、季節はどう扱ったらよいのでしょうか。
(たとえば8月に結果発表の公募の場合、
夏の短歌がいいのか冬でも問題ないのか。季節が関係ない方がいいとか)
季語を入れる俳句は、掲載時の季節を意識して応募するのが基本だと聞いたことがあります(もちろん、公募ごとに違いますし、結社誌もそれぞれの方針があるでしょう)。一方で短歌はそもそも季語が不要ですし、季節感の有無も問われません。もし、特定の季節の内容の短歌を応募したい場合でも、ほとんどの公募では関係ない気がします。
ただし、特に新聞歌壇など、日常的に多くの人が読む媒体での投稿欄では、旬の事柄や季節にあった作品を積極的に採用する選者もいます。応募先の規定や、これまでどんな作品が採用されているかなど、ぜひチェックしてみてください。
短歌を詠んだ人に感想を求められた時、
こんな風に答えればよいといったポイントはありますか。
ずばり、感想を求めてきた人との関係性によるかと思います。たとえば、大型の短歌新人賞への入賞を目標としている人が「忌憚のない意見を聞かせてほしい」と言ってきたら、自分なりに良いと思った点、良くないと思った点を理由つきで真摯に伝えるのがいいかもしれません。一方、短歌をはじめたばかりの人や楽しくつづけたい人が、励みになるような言葉をほしいと思っているのなら、ぜひ良い点をたくさん伝えてほしい気がします。結局、感想を求める・伝えるというのはコミュニケーションの一種なので、相手との関係性と状況によりけりだと思うのです。
いずれの場合も、感想と一緒に「その理由」を自分なりの言葉で伝えるといいかもしれません。また、できるだけ細かく「この言葉が好き」「この言葉から、こういう状況が目に浮かんだから面白い」など伝えると◎です。この「あなたとよむ短歌」の入選作品へのコメントも参考になるならうれしいです。
オノマトペがありきたりになりがちです。
どんな風に工夫されていますか?
「びゅうびゅう」「ワンワン」「ガタガタ」など、物事の様子や動物の声などを表したものがオノマトペです。擬音語・擬態語とも言われます。短歌でもオノマトペを含んだ秀歌は多くありますね。
ひとりでに落ちてくる水 れん びん れん びん たぶんひとりでほろんでゆくの
(蒼井杏『瀬戸際レモン』書肆侃侃房)
たとえばこの短歌は、水がぽたぽたと落ちてくる音を「れん びん れん びん」というオノマトペで表しています。空き瓶や金属の板などに垂れている大粒の雫の音のようです。同時に、この独創的なオノマトペからは「憐憫」という熟語も想起され、周囲からあわれに思われながらも誰にも助けてもらえない「たぶんひとりでほろんでゆくの」という下句の孤独感に帰結する一首です。
オノマトペは比較的音数を「食う」表現手法です。短歌は約31音という限られた音数であるため、質問者さんがおっしゃるとおり、ありきたりなオノマトペを使うくらいなら他の表現の方がベターかもしれません。一方で、一般的でないオノマトペを使うと、他者には理解されないリスクもあります。また、オノマトペ自体にかなりインパクトがあります。オノマトペを入れると、短歌そのものがオノマトペに持っていかれがちです。
以上の点を踏まえると、短歌にオノマトペを使うのは、実は難易度が高いものです。しかしだからこそ、果敢にチャレンジしていくのもアリだと思います。私自身は、正直にいうと、ここ最近ではあまり使っていません。使う場合には人に伝わるか、使う効果が本当にあるのか、ものすごく考えます。
作品や質問のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「文房具」を募集しています。 テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。 どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「文房具」。 応募点数制限なし。 応募フォームに柴田さんへの質問欄を設けています。短歌のことや、作品づくりについて選者:柴田葵さんに質問があればご自由にお書きください。匿名で質問内容とその回答を記事に掲載させていただく場合があります。必ずしも回答があるわけではございませんので、ご了承ください。 |
応募方法 | 応募フォームからご応募ください。 ※今回からX(旧Twitter)での応募はなくなりました。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
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締切 | 2024年11月30日 |
発表 | 2025年1月1日 |