あなたとよむ短歌 vol.57【お悩み回答】~評や感想の受け取り方~(3/3)
それでは、今回はもいただいたご質問に回答していきたいと思います。まずはおふたりから寄せられた、似たようなご質問です。
結社の編集委員に苦手な人がいます。
(歌をコテンパンに批評されました!)
歌を否定されてもくじけないコツを教えてください。
短歌を酷評されてショックです。
立ち直るにはどうしたら良いですか?
コテンパンにされてしまいましたか。酷評されたらショックですよね。傷つく気持ちもわかります。でも、心が落ち着いたあとで、もう一度その評を読んで(もしくは思い返して)ください。
その評は「こうだから、このようにダメだ」というふうに理由が添えられていましたか? また、「納得はできないが、そういった見方もあるしれないな」などと、わずかでも汲み取れる部分がありましたか?
もし「いや、理由なんて書かれていない。これは自分にとってただの暴言だ」「まったくもって的外れだ。一切何も汲み取れない」と感じるのなら、とりあえずさっぱり忘れてしまっていいと思います。心のなかでちょっと悪態をついてもいいので、終わらせてしまいましょう。少なくとも今の自分自身には生かすことのできない意見なら、抱えて傷ついているだけムダです。どんな偉い人の評でもそうです。
たとえば仕事相手に「ここの部分が良くない、これでは仕事にならない」と言われたら、どうにかして擦り合わせないといけません。けれども、短歌という表現活動においては、とにかく「自分ありき」でいいはずです。むしろ、自分を無にしては表現などできません。
その評が正当なものだったのかどうか、私自身が読んだわけではないので判断はできません。ただ「表現者は必ずしもすべての評を受け取らなくてもいい」と思っています。
作品を人目に触れる場所にだすと、いろいろなことを感じとって言葉にする人も現れるでしょう。おそらく何事も、自分自身の腕を向上させるためには(褒め言葉だけを受け取るのではなく)自分の糧になる言葉を取捨選択することも必要になってきます。
もちろん、もしも評や感想にかこつけた差別やハラスメントを受けたなら、あなたはただの被害者です。できればはっきり拒否したいところです。結社なら、まず同じ結社の親しい先輩か、組織内の相談窓口に連絡するといいかもしれません。
短歌では「君」は恋人のこととどこかで読んだ覚えがあるのですが、
恋人以外には使えないのでしょうか。
恋人以外にも「君」は使えます。和歌の時代から、恋人だけでなく目上の人や敬愛する人に使われる人称代名詞です。ただ、短歌において、質問者さんがおっしゃるとおり「君」は「恋人」しかも「異性の恋人」という前提がひと昔前には強かったようで、そのような前提で読解する人がいるのも事実です。特にご年配の人に多い印象です。
短歌は音数の限られた表現なので、すべての情報を特定して書ききれません。その特定しきない部分について、読者は自分に引き寄せて読むことが多くあります。よって、たとえば作者としては友人のことを書いたつもりでも、読者は恋人だと思って読むこともままあります。その逆もあるでしょう。
ある意味で仕方がないことであり、短歌の面白さだとも言えますが、もし評や感想を述べる場合は「作品内に書かれた情報」「読解の幅」「憶測」の違いは意識したい点です。
「これは『君』とあるから恋の歌である」
「作者はペンネームからして女性っぽいので恋人は男性のはず」
「口語短歌だから作者も作中主体もきっと若い。たぶん20代!」
このような、雑な推理めいた感想には困ってしまうことがあります。読者として作品をどう楽しむかは自由ですが、人目につくところや作者本人に感想・評を掲出する場合には、できるだけ誠実でありたいと私は思っています。
作品や質問のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「アニメ」を募集しています。 テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。 どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
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締切 | 2024年12月31日 |
発表 | 2025年2月1日 |