世にも奇書な物語 Vol.2
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『文体練習』
レーモン・クノー
朝日出版社
99の文体で書き分けた!
まず、実用的な本ではない。文体を習得しようとして読んでもあまり実りはない。しかし、「なんだよ、これ。よくやったな」という文学的感動を覚えることは保証しよう。
この本は、「バスの中で男が口ゲンカし、2時間後、その男が友人からコートにボタンを付けたほうがいいと言われるのを見る」という短文をなんと99通りの文体で書き分けている。
たとえば、「改まった手紙」文体、「新刊のご案内」文体、「俺はね」文体、「白日夢」文体などはまだまともだが、「間投詞」文体は〈おい! えっ! アー!〉と全文が間投詞で、「短歌」文体まである。ギャグと紙一重の前衛文学という感じで、なるほど的を射ていると感心するやら笑えるやら。
レーモン・クノーは1960年に発足したウリポの一人。ウリポとは言語遊戯的技法の開発を通して新しい文学の可能性を追求した文学グループで、クノーはウリポとしてさまざまな文学的実験を行っている。古典中の古典で、絶賛する作家も多く、インスパイア作品も少なくない。あなたもご賞味あれ!
インスパイア作品
『文体練習』ぐらい衝撃があると、インスパイア作品もでてくる。『ウンベルト・エーコの文体練習』もそうで、古典的名作のパロディーが満載だ。
日本には『もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら』があり、これもウケる。

『絵本ジョン・レノンセンス』
ジョン・レノン
ちくま庫
ジョン一流の前衛的笑い話
「イマジン」の歌詞は想像しないほうがよい。むしろ真逆。前衛的で、意味不明な絵本だ。
ジョンは自身による「著者について」の中で「笑い話」と書いているが、ユーモアでもウィットでもなく、あるのは毒。
ビートルズの巡回公演のとき、紙ナプキンや便せんに書きとめたものだそうだが、口の中で音を変化させた造語も多く、意味はなさず。ポールの序文いわく「なんとなく面白いな、おかしいなと思えればそれで充分」。だが、「マザーグース」っぽい残酷さもあり、人によれば深淵で哲学的な境地になれるかも。
三
大
積
読
小
説
独断で
決めた!
決めた!
『失われた時を求めて』
マルセル・プルースト
岩波文庫
「紅茶に浸したマドレーヌ」で知られる。岩波文庫で14巻。買ったはいいが挫折者多数。
『ユリシーズ』
ジェイムズ・ジョイス
集英社文庫
意識の流れの技法は日本文学にも多大な影響を。20世紀最大の実験的小説は文庫で4巻。
『百年の孤独』
ガルシア・マルケス
新潮文庫
昨年、ついに文庫化。ラテン文学ブームのきっかけとなったノーベル文学賞受賞作。
採用分にステキな記念品を差し上げます。