せきしろの自由律俳句 第98回「夕方」結果発表 (2/3)


第 98回 課題: 夕方
佳作
夕日に照らされたまな板傷だらけ
(大阪府 フルカワ 33歳)
まだ今日をやり直せる明るさだ
(北海道 エリンギ 37歳)
影が伸びたぶんだけ今日を生きた
(京都府 北大路京介 45歳)
焼き鳥が人の列を作る
(千葉県 山和ウラ 46歳)
主待つ置き配
(京都府 Isohama 48歳)
待合室で知る四股名
(北海道 下小路智之 48歳)
横綱が負けたらしい
(東京都 米biz 61歳)
完熟になる太陽
(大阪府 石川かるた 51歳)
ハッケヨイの声夕方だ
(大阪府 和悟 70歳)
もうない家に帰りたい
(千葉県 xissa 59歳)
知らない家に知らない人がいる
(福島県 可笑式 59歳)
ぶらんこ乗り放題でさみしい
(神奈川県 Akiki 59歳)
西日のあたらない席を知っている
(福岡県 長谷川 酔 22歳)
座る席間違えて西陽と向かい合う
(神奈川県 紺屋小町 46歳)
日が長くなりましたねトンボ
(埼玉県 こせきり 19歳)
駅のホームで慎重にケーキを持つサラリーマン
(秋田県 日記ニキ 24歳)
まだ逆上がりをしている子がいる
(和歌山県 中村マコト 52歳)
団欒の匂いかき分け弁当買いにコンビニ
(東京都 根本史紀 54歳)
朝褒められたのに夕べには叱られる
(千葉県 牛美 87歳)
夕立匂う町にひび割れ
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
『夕日に照らされたまな板傷だらけ』
人生たしかにまな板の傷を意識する時が何度かある。それを思い出させてくれた。
『まだ今日をやり直せる明るさだ』
希望がある。あまりにも寝過ぎた時にこう思うことがある。
『影が伸びたぶんだけ今日を生きた』
夕方になると影が伸びる。今日も夕方まで生きたのだ。
『焼き鳥が人の列を作る』
スーパーの前にある焼き鳥屋台に人が並ぶ夕方が見える句だ。
『主待つ置き配』
もう少し暗くなれば、きっと主は戻ってくるだろう。
『待合室で知る四股名』
『横綱が負けたらしい』
『ハッケヨイの声夕方だ』
夕方といえば大相撲中継のイメージが強い。昔は時代劇再放送のイメージも強かった。
『完熟になる太陽』
年に一、二回、ハッとするような色の太陽を見ることがある。
『もうない家に帰りたい』
時折り子どもの頃に住んでいた家を思い出そうとするが、間取りはあやふやである。
『知らない家に知らない人がいる』
当たり前のことであるが、夕刻になるとふとそんなことを考えることがある。
『ぶらんこ乗り放題でさみしい』
夕方の公園にひとり。
『西日のあたらない席を知っている』
『座る席間違えて西陽と向かい合う』
対照的な二句。