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【夏井いつきの俳句教室】誰でもできる”取り合わせ俳句”の作り方とは?季語の選び方も!

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取り合わせは面白い!

取り合わせはカメラのカットで考えよう

取り合わせは文字通り「季語と俳句のタネが取り合わさっている」型のこと。カメラのカットのように、場面がパッと切り替わるイメージだ。「取り合わせ」は初心者におすすめの型であると同時に、世の中の俳句の80%以上が取り合わせであるといわれている。

ちなみに、取り合わせではない型として「一物仕立て」というものがあり、季語そのものだけを詠みあげる型だ。俳句は大きく分けると「取り合わせ」と「一物仕立て」の2つに分類される。俳句を読むときは「これはどちらかな」と考えながら読むのがおすすめ。取り合わせの場合は、2つのカット同士がどういうふうに作用し合っているのか感じてみよう。

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プロでも難しい一物仕立て

純粋な一物仕立てはわずか数%しかないといわれている。季語だけを詠むほうが簡単に思えるかもしれないが、季語に対する比喩が入っただけでも一物仕立てとはいえなくなるため、とても難しいのだ。しかもそれだけを詠もうとすると、ほかの人と似たり寄ったりになってしまう危険性も高い。一物仕立ての有名な句としては水原秋櫻子の「冬菊のまとふはおのがひかりのみ」などがある。

季語を選ぼう

いろいろな季語を当てはめて、違いを感じてみよう。

しっくりくる季語を選ぼう

俳句のタネができたら次は季語を選ぼう。初心者が一番ハードルの高さを感じるのが季語だが、12音+5音の型で作る取り合わせなら、季語は季語表から選んでつけるだけでよい。

選ぶ際は、適当に1つだけ選ぶのではなく、いくつか試して一番しっくりくるものを選ぼう。

激しい12音であれば季語も激しいものが合うかもしれないし、もしかしたら全く逆で、激しい俳句のタネに静かな季語を合わせることでタネがいっそう際立つこともあるかもしれない。正解はないので、自分はどんな響き合いが好きか確かめながら、自分にとって一番ベストな季語を探すと楽しい。

下記に初心者でも使いやすい5音の季語を集めたので、まずはここから選んでみよう。季語を一つ一つ読みがら、自分はその言葉からどんな風景や情緒を感じるか、考えてほしい。

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季語を変えれば印象が変わる

その俳句のタネ、どんな気持ち?

季語を選ぶときは、まずは俳句のタネがどんな気持ちのものか整理しておこう。「コーヒーを飲む昼休み」という12音でも、疲れたときに飲んでいるのと、晴れやかな気持ちで飲んでいるのでは選ぶ季語が変わる。「明るい句だな」と思えば、季語も爽やかなものを選ぶとしっくりくるはず。季語によって変わる印象を確かめながらすすめよう。

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歳時記のすすめ

もっと季語を知りたいと思ったら歳時記を!

季語を選ぶ楽しさを知ると、もっとほかの季語も知りたい! と思うようになる。そんなときはぜひ歳時記を買ってみよう。インターネットでも一応調べることはできるが、パラパラと歳時記をめくって「春炬燵って面白い季語だなあ」とか「これなんて読むの?」など、小さな発見を繰り返していくことも季語の面白さだ。

いざ歳時記を買おうとすると、大きさも値段もいろいろあって迷ってしまうかもしれないが、最初は自分が手に取りやすい価格帯や持ち運びしやすいものを1冊買えば大丈夫。お金がかかるのかあと躊躇する人もいるが、数百円で買えるものもあり、すぐ調べて楽しめる安心感も手に入る。

歳時記と紙とペンさえあれば、どんな場所でも何歳になっても楽しめるのが俳句の良さだ。

歳時記の使い方

歳時記にはいろいろなことが載っているので、歳時記だけで俳句の勉強ができるともいえる。基本的には次の項目が載っている。

● 季語
● 季節
● 関連する季語
● 解説
● 例句

詠みたい季節のページを開き、解説や例句を見ながらしっくりくる季語を探していくのが一般的な使い方だ。

おすすめの歳時記

せっかくならプロも使うような歳時記がほしい! という方に、夏井先生が実際に使っている歳時記を紹介する。

『カラー版新日本大歳時記』(講談社)

春から新年までの5巻で1セット。多くの季語を収録していながら、フルカラーでとても見やすい。

季語の分析編 五感で季語を感じよう

五感情報を持つ季語を句作に生かすために、季語にどんな力があるのかを知っておきたい。六角成分図を使い、季語の成分を分析しよう。

季語を分析し、不足した成分を盛り込む

季語の六角成分図は、季語の持つ要素を五感と連想力の六つの成分に分け、数値化したもの。「季語は、それを読むと情景が浮かんだり、音を感じたり、すでに五感情報を持っています。これに連想力を加えたのは、『子規忌』といった五感情報の少ない忌日の季語があるからです。季語の本意は歳時記に書いてありますが、分析すると季語の性格が明確にわかります。六角成分図の線で囲まれた部分が季語に対するその人の認識ということになりますが、取り合わせで季語を選ぶときは、季語以外の部分に季語が持っていない成分を盛り込む。そうすると句が立体的になります」(夏井先生)

『NHK俳句夏井いつきの季語道場』(NHK出版・1400円+税)
六角成分図のほか、季語について詳細に分析。

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※本記事は2021年3月号に掲載した記事を再掲載したものです。