多和田葉子が語る新作オペラ『ナターシャ』の世界 - 言葉と音楽が織りなす現代の地獄めぐり
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作家・詩人の多和田葉子氏が、自身が台本を手がけた新作オペラ『ナターシャ』について語るトークイベントが開催された。作曲を担当する細川俊夫氏との出会いから、オペラ創作の過程、そして作品に込められたメッセージまで、多岐にわたる話題が展開された。
多和田氏は、『ナターシャ』の構想について「現代の地球で起きている様々な問題を、ダンテの『神曲』にインスピレーションを得た"地獄めぐり"として描いた」と語る。環境破壊、プラスチック汚染、気候変動など、現代社会が直面する課題が、オペラの中で「森林地獄」「快楽地獄」「洪水地獄」などとして表現されるという。
また、多言語オペラとしての特徴も注目点だ。「ウクライナ語、ドイツ語、日本語を中心に、英語やフランス語、中国語なども登場する」と多和田氏。「言葉の意味を超えて、全体として理解される体験」を観客に提供したいという。
細川俊夫氏の音楽については、「静寂そのものが演出され、作曲される」と評し、「音が聞こえている状態と聞こえていない状態の境界線」の表現に注目していると語った。
『ナターシャ』は、ウクライナ出身と思しき女性ナターシャと、日本から来たアラトが海辺で出会い、メフィスト的な存在に導かれて現代の「地獄」を巡るという物語。環境問題や多文化共生といった現代的テーマを、詩的な言葉と音楽で紡ぎ出す意欲作となりそうだ。
新国立劇場での世界初演を前に、多和田氏は「言葉が消えた後に残る情念の動きのようなものが前面に出てくる」というオペラならではの魅力を強調。文学と音楽が融合した新たな芸術体験への期待が高まる。
新作オペラ『ナターシャ』は8月11日に新国立劇場で世界初演を迎える。言葉と音楽が織りなす現代の地獄めぐりに、多くの観客が引き込まれることだろう。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001003.000047048.html