あなたとよむ短歌 テーマ詠「謎」佳作 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
渡すのか渡されたのか花束を抱える人の降りる夕暮れ
(白鳥さん)
「降りる」という言葉から、電車やバスなどの公共交通だろうと読めます。通りすがりで事情はわからなくとも、誰かから誰かに渡す、祝う、労うという優しい気持ちの交換が発生している事実に心が明るくなる一首です。
きみだけが解けるダイイングメッセージ今のうちから考えとくね
(嘉賀レキさん)
ミステリーの定番、ダイイングメッセージ。残すような大惨事は、現実には起きないかもしれません。でも、きみだけに解いてもらいたい何かがあるということ自体がドラマチックです。
店員がやって来る前に見つけたい残りの間違いあとふたつだけ
(梅木聡さん)
サイゼリヤなどのファミレスによく置いてある間違い探しですね。大人になってもなんとなくやってしまいます。「店員がやって来る前に」という絶妙なハラハラ感がリアル。
水槽の中で漂う僕を見て自由でいいなと人間は言う
(えぺさん)
結句まで読むと気づける、魚から見た人間の短歌です。限られた水槽で決まった餌を与えられる魚と、やることも考えることもたくさんの人間。どちらがより自由なのか、たしかに謎です。
お土産の謎のお菓子の食感が消えずに口がアメリカになる
(立田渓一さん)
「口がアメリカになる」という表現がいいですね。海外のお菓子は食べ慣れないうえに味が濃いものも多くて、口の中の感覚が持っていかれる感じがします。味覚を詠んだ短歌。結局あのお菓子はなんだったのか、食べてもわからない謎が面白い一首です。