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あなたとよむ短歌 テーマ詠「卵料理」結果発表 ~今回から採用数UP!~

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結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.68
テーマ詠「卵料理」結果発表
~今回から採用数UP!~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「卵料理」の結果発表です。

もし、短歌を詠むのに行きづまりを感じたら、なにか具体的な単語で題詠を試みてはいかがでしょうか。
たとえば目をつぶって紙の辞書を開き、指を刺した単語で詠んでみたり、街中でふと目に入った単語で詠んでみたり。その際、花鳥風月やエモーショナルな単語(喜怒哀楽、愛、恋、死など)ではなく、なるべく淡々とした言葉がいいかもしれません。インパクトの強い単語は、どうしても作品が引きずられてしまいがちなので、手慣らしには使いづらい気がします。今回のテーマ「卵料理」はまさにうってつけですね。

応募数が増え、すてきな短歌がたくさん寄せられていることから、今回からは最優秀賞・優秀賞・佳作に加えて「入選」も選出することになりました。

後半では投稿者の皆さんの質問に回答しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。

それでは、最優秀賞の発表です!


夕飯のカレーにゆでたまごがある
 きみが他人と分かりうれしい
(竜泉寺成田さん)

もし「カレーのトッピングといえば?」とアンケートを取ったら「卵」は上位にランクインしそうです。でも、ゆで卵か、目玉焼きか、生卵か……どれがその人の「普通」なのか、その感覚は異なるでしょう。
この「夕飯のカレー」は、外食ではなく、家で「きみ」が作ってくれたもののようです。そこにゆで卵が添えられていたのを見て、作中の主体(視点となっている人物)は「きみは他人」だと思った。つまり、主体はゆで卵派ではなかったんですね。
もし「きみ」と主体が家族になって、ずっと長く一緒に暮らしていたら、その家の「普通」がたくさんできていくことでしょう。けれども、「きみ」とは「他人」だという事実を、主体は「うれしい」と感じているようです。
「きみ」が「きみ」だからこそうれしいのかしれません。違う人間同士が、それでも縁があってこうして夕飯を囲んでいる、そんなよろこびがしみじみ伝わってきます。


続いて、優秀賞2首です。

砂山を崩すみたいに中華屋で
天津飯を交互に掬う
(嘉賀レキさん)

砂山を作って棒を立て、それを順に崩していく「棒倒し」の遊びがありますね。ふたりでひとつの天津飯を注文し、丸く盛られたご飯を分けて食べている様子を、子どもの頃の遊びになぞらえた一首です。きっと他のメニューも注文して分けあっているのでしょう。
「うれしい」「おいしい」などの感情語は入っていませんが、ふたりの親密さや、あたたかな天津飯が想像できませんか? 棒倒し遊びの楽しさ、幼いころの気を許した感じが、町中華のワンシーンにぴったりとマッチしています。「交互に掬う」というところからも、自然と息の合った様子が伺えます。


ニラ玉の玉だけ食べる犯人を
責めずに父はニラだけ食べる
(遊鳥泰隆さん)

「父は」という表現からも「犯人」は子どもであることが推察されます。ニラって、幼い子供は苦手な場合も多いですよね。味のクセだけでなく、繊維が硬めだからかもしれません。
それでもニラ玉はおいしいものです。こっそり卵の部分ばかり狙って食べる子どもを、まあいいかと受け入れて、お父さんはニラばかり食べています。実はお父さんはニラの方が好きなのかもしれません。だとしたらwin-winですね。
「ニラもしっかり食べなさい」と諭すのも愛情なら、卵だけ食べる我が子を見守るのも愛情でしょう。何が良い悪いではなく、家族の食卓というもののリアルな質感がある一首です。「ニラ玉の玉だけ」って表現、おもしろいですね。



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