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あなたとよむ短歌 テーマ詠「推し」結果発表 ~盗作・パクリの可能性~

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結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.69
テーマ詠「推し」結果発表
~盗作・パクリの可能性~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「推し」の結果発表です。

自分が強く応援している人やキャラクターのことを「推し」と呼ぶことは、すっかり世間に定着しましたが、いまだに慣れない人もいるかもしれません。
言葉は、意外と10年単位で変化するものです。その変化に違和感や新鮮さを覚えることもあるでしょう。受け入れるのも受け入れ難く思うのも、自分自身の自由です。いずれにしても、言葉で表現する身としては、変化していること自体を積極的に認識していきたいなと思います

後半では投稿者の皆さんから寄せられた質問にお返事しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。

それでは、最優秀賞の発表です!


そこまでの愛はないけど一度だけ
目が合ったとき口が渇いた
(反時計さん)

「そこまでの愛はない」と判断して言葉に表すのは、とても理性的な思考です。一方で、目が合ったときに「口が渇いた」というのは生理的な身体現象です。いったいどちらが真実なんでしょうね。相反するものを抱えるのが人間なのかもしれません。
短歌という短いフレームのなかに、心と身体との対比が見事に描かれていて、人に惹かれる瞬間というのはこういうものなのだという説得力がある一首です。
「一度だけ」しか目が合っていないのにずっとその瞬間を覚えている時点で、愛なのか恋なのか憧れなのかはわかりませんが、心身になにかが刻まれてしまった証左だと私は思います。


続いて、優秀賞2首です。

ブランチで推しが紹介した店に
出かけた妻が帰って来ない
(泰源さん)

「帰ってこない」理由がまったくわからない点がものすごくいいですね。ちょっと不穏であり、こっけいであり、妻への愛も感じます。「ブランチ」などの明るい語感から、なんとなく悪い予感はせず、どちらかというと妻がものすごく推し活を楽しんでいる結果、聖地巡礼などして盛り上がって遅くなっているのかな、とも思いますが、うーん、わからないですね。帰ってくるといいですね。
短歌ですべてを説明し切らなくてもいい、ある一部を明確に切り取る面白さが感じられる一首です。


惣菜をあたためながら考える
架空の人の眉毛について
(嘉賀レキさん)

「架空の人」つまり創作物でしょう。この人の推しは漫画やアニメのキャラか、Vtuberかもしれません。眉毛に特徴があるキャラクターでしょうか。なんとなく、鬼滅の刃の煉獄さんなどを想像しました。
眉毛というのはものすごく表情を左右するものです。その割にパーツとしては注目されづらい部分ですね。「瞳」か「背丈」でも短歌的に音数は合いますが、やはり眉毛が魅力的な一首です。
考えているのは「惣菜をあたためている」時間。数十秒間の何気ない隙間にすら、そのキャラのことを考える、それがこの人の日常であることが伝わっています。



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