せきしろの自由律俳句 第103回「電気」結果発表 (2/3)


第 103回 課題: 電気
佳作
替えがない蛍光灯の明滅
(東京都 みずら 16歳)
足だけ冬を知らない
(東京都 めめめい 18歳)
ほつれたコードにさえ頼ってる
(広島県 箭田儀一 20歳)
すこし明るいせいで怖い
(宮城県 佐藤大粒 23歳)
雨の教室朝につく電気
(神奈川県 明朝 24歳)
電気を消してしまって姉が遠い
(千葉県 ような恵 27歳)
空にのこった明るさだけで本を読む
(山形県 めきち 35歳)
節電と打ち込んだ紙印刷する
(栃木県 縦川 島々 35歳)
視聴覚室の暗幕を引く
(北海道 エリンギ 38歳)
雷見るのに忙しい
(神奈川県 杏駄木さや 42歳)
引っ越しの廊下 最後の蛍光灯が瞬く
(愛知県 旬太郎 44歳)
ブレーカー落とし長い旅に出る
(京都府 きよむ 45歳)
夕暮れて点る看板目指し歩く
(神奈川県 紺屋小町 46歳)
電気を点けて孤独が濃くなる
(京都府 北大路京介 46歳)
電気つけてと言っても独り
(岡山県 ののはな 12歳)
停電の夜の家族の声が明るい
(新潟県 団滋 52歳)
エアコンに命預ける夏
(静岡県 幸江 57歳)
豆電球がなつやすみを灯す
(神奈川県 Akiki 59歳)
下宿の窓にまだ灯りがつかない
(岡山県 よっちん 80歳)
蛍光灯はちらつくが涼しい
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
『電気つけてと言っても独り』
放哉を下敷きにした句。「あっ、誰もいないんだった」と気づく孤独。
『替えがない蛍光灯の明滅』
蛍光灯を買うまで我慢するしかない状況である。
『足だけ冬を知らない』『
足元を温める。こたつもあれば、足湯もある。
『ほつれたコードにさえ頼ってる』
危険な状態だとはわかっているが、それに身を委ねなければいけない時はあるものだ。
『すこし明るいせいで怖い』
昔、祖母の家に日本人形があって、この気持ちに何度もなったものだ。
『雨の教室朝につく電気』
ちょっとした非日常感。
『電気を消してしまって姉が遠い』
怖い本や心霊番組を見た時は特にこうだった。
『空にのこった明るさだけで本を読む』
電気をつけることを忘れるほど読書に夢中になることがある。
『節電と打ち込んだ紙印刷する』
A4サイズの紙で「節」と「電」の2種類がプリントされて貼り出されそうである。
『視聴覚室の暗幕を引く』
暗幕の力と同時に光の力も知る瞬間である。
『雷見るのに忙しい』
思わず「あ、ごめん」と言ってしまいそう。
『引っ越しの廊下最後の蛍光灯が瞬く』』
それは別れの挨拶のように。
『ブレーカー落とし長い旅に出る』
旅先で様々な灯りに出会うことだろう。
『夕暮れて点る看板目指し歩く』
旅先の夜は「あのビジネスホテルの看板まで」と歩くことが多い。
『電気を点けて孤独が濃くなる』
思い出が露わになって孤独になる時もあれば、なにもなくて孤独になる時もある。