あなたとよむ短歌 テーマ詠「推し」佳作・入選 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
結局は遠い推しより体温を感じるきみに勝算がある
(真朱さん)
五感のうち「体温を感じる」という触覚を出しきているところが、テーマである「推し」へのカウンターとして見事。でもまだ「勝算がある」だけで勝ってはいない点も面白いです。
この色が良いねと推しが言ったからUNIQLOの春を買い占めに行く
(阿原さん)
俵万智さんのサラダ記念日の一首の本歌取り。「UNIQLOの春を買い占めに行く」という明るさ・景気の良さ。新しい色の服に挑戦するなど、推し活を通じて興味をいい感じに広げていけたら幸せですよね。
推しもせず推されもせずに母が出す鮭おにぎりで朝が始まる
(はしもりさん)
推し活とは無縁の生活。自分で誰かを推すことも、当然ながら推されることもない。多くの人はそうでしょう。それでも母が「出す」おにぎりで朝が「始まる」。「推す」を想起させつつ、等身大の動詞の並び。
スキャンダルそれすら越える推し愛に胸の中には王国がある
(橋本さん)
「胸の中には王国がある」の説得力。王国にはその王国の法律があるのでしょう。いつのまにか自分の胸の中に国ができていたんですね。まるで国が建つくらい、私たちの胸の中はとても広くて深く、複雑なもの。
夢にまで出てくる好い人はいないが夢に出てきた力士ならいる
(本田つづりさん)
最後に力士が出てくる、このインパクト! 推し力士が出てくるなんてとてもいい夢ですね。「好い人」という古風な言い回しの対比として「力士」というのも、絶妙なハマり具合で面白いです。
つづいて、入選10首のご紹介です!
お墓まで参れる系の推しがいてなんでもない日あいさつに行く
(吉田直子さん)
それぞれに推しを隠した家族らが感情を隠し切れない年末
(泰源さん)
君がいるだけで私は生きられる別に実在しなくてもいい
(白鳥さん)
春風の行き着く場所にきみはいて目を閉じたならいつでも会える
(髙山准さん)
推しはまだ見つけられない 今日もまた枝の影とか見て過ごしてる
(りきながさん)
伊野尾慧伊野尾慧好き伊野尾慧伊野尾慧好きずっとだいすき
(野村優雛羽さん)
今はもう追いかけていないアイドルの歌声不意にぼくを励ます
(さとうきいろさん)
よく食べてよく寝てどうかすこやかにみんな誰かの推しなのだから
(久方リンネさん)
猫カフェに重課金してる先輩が部費の支払いまた伸ばしてる
(村川愉季さん)
思い出はいっぱい持っているけれど今のあなたに常に会いたい
(まるさん)