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【編集部取材で見えた】短編童話賞の傾向と受賞者が語る創作のヒント

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童話・児童文学
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※掲載している情報は過去のものの場合があります。今年度の開催状況は、主催者サイトを随時ご確認ください。

受賞者インタビューと本誌編集部による短編童話賞ナビ

直近の受賞者コメントを中心に、短編童話賞の入選のヒントを解説。編集部による取材メモも併録。

グリム童話賞

取材メモ

毎年テーマが変わり、第20回は「7」。グレードの指定はないが、入選作の多くは幼年童話ではなく、もっと大人びた幻想的なメルヘンが多い印象。前回受賞作も主要人物が老婆と悪魔で、文体も大人向け短編小説風でもある。

子ども向けを意識しすぎなかったのがよかった

第20 回大賞(一般の部)須藤晏那
過去に5回、入選経験があります。大学受験があるので、今回は応募を見送ろうと思っていました。しかし、ちょうどテーマ「7」に沿った内容の話を思いつき、創作の欲求に負けて応募しました。

子ども向けというのを意識しすぎなかったのがよかったと思います。自分の中にある風景を軟らかく表現することに努めました。

賞の傾向はまったく考えず、読み聞かせをするときに聞き手が楽しめるよう書きました。難しく考えすぎたり、変に凝りすぎたりせずに、表現したい世界を優しさに乗せて文字にしていくのがよいと思います。

受賞作 「白樺の庭」須藤晏那
老婆は名前を変えるたびに白樺を植えた。7本の白樺それぞれに悪魔がいた。それは老婆の人生のあるときの自分だった。

募集概要(第20回例)
主催 グリムの里いしばし
内容 童話。テーマあり。
枚数 10枚以内
賞 10万円(一般の部)
選考委員 岡信子 こやま峰子 戸田和代 天沼春樹 橋本孝
応募数 第20回・296編
締切 11/3

新美南吉童話賞

取材メモ

小学校低学年向けっぽい作品から中学年向けっぽい作品までいろいろだが、新美南吉的な心が温かくなる作品が多い。通常の自由創作部門のほか、新美南吉オマージュ部門では「ごんぎつね」などへのオマージュ作品が寄せられる。

心が温かくなるようなお話を!

第 31回最優秀賞(自由創作部門・一般の部) のむらきみこ
応募作は「小さい者が大きい者を助ける」という話にしたかったんです。それで、耳が悪くなったゾウをネズミが助けるというストーリーにしました。最初はそれだけだったのですが、しばらく原稿を寝かしているうちに、最後にネズミを褒めてあげたいと思い、これが結末のハッピーエンドにつながりました。間をおいて客観的に自作をみられたことがよかったのかもしれません。

童話を書くことは私にとっては癒やしでもあります。読む人も自分も心が温かくなるようなお話を作っていきたいと思っています。

受賞作 「カンとネル」のむらきみこ
ゾウ使いはゾウのネルが仕事をしないと言う。ネルは年のせいで耳が悪いのだ。そこでネズミのカンはネルの耳の中に入り……。

募集概要(第31回例)
主催 半田市教育委員会
内容 自由創作部門と新美南吉オマージュ部門。
枚数 7枚以内(一般の部)
賞 50万円
選考委員 藤田のぼる 酒井晶代 富安陽子 山本悦子 ほか
応募数 第31回・1561編
締切 9/15

ENEOS童話賞(JXTG童話賞から改称)

取材メモ

第49回は時代もの、第48回の主人公は吟遊詩人、第47回の主人公はイカ(いずれも一般の部最優秀賞)。応募数が桁違いに多く傾向はさまざまだが、物語の骨格がシンプルで、小学校低学年でも理解できるという作品が多い。

ただただビギナーズラックであったと思う

第50回最優秀賞(一般の部) 宮田一平
妻が何気なく私に「応募してみたら」と言い、それを私が真に受けたというのが応募の経緯です。私も妻も世の中にどのような童話賞があるのか白紙状態でしたから、ただただビギナーズラックであったと思います。

選考委員のコメントに「書きたいことを絵のように思い浮かべながら書くのがいい」とありましたが、私の場合、そのやり方で書いたなと、これはあとから思いました。

私のようなビギナーにもチャンスは巡ってきたのですから、決して逡巡することなく、一人でも多くの方々にのびのびとチャレンジしていただきたいと思います。

受賞作 「雨がすき」宮田一平
雨の日、花は父親を迎えに駅に行く。そこに達夫がいた。一年後、花が雨宿りしていると達夫が現れ、達夫は花を家まで送っていく。

募集概要(第51回例)
主催 JXTGホールディングス
内容 「心のふれあい」をテーマとした創作童話。
枚数 5枚以内
賞 100万円(一般の部)
選考委員 西本鶏介 立原えりか 角野栄子 中井貴惠 宮西達也 薫くみこ ほか
応募数 第50回・10,425編
締切 5/31

家の光童話賞

取材メモ

就学前後の子どもが対象なので、複雑な展開のファンタジーなどはなく、物語の骨格がシンプルで、ベタでありながら、豊かな発想の作品が入選している。教訓話ではないが、子どもが何か気づきを得られるような作風が〇。

母に負けるわけにはいかないと応募!

第34回家の光童話賞 平井美里
「家の光が童話を募集してはるわ。出してみたら」と母。そして、「5枚なら私も書こうかな」と。これまで話など書いたことがない人が言い出したので、負けるわけにはいかないと応募することにしました。

家の光童話賞は初応募でしたが、第19回ちゅうでん児童文学賞(優秀賞)、第5回森三郎童話賞(佳作)で入選経験があります。

自分の作品がそうだと言うのはおこがましいですが、家の光童話賞応募に向けて「地に根づいていて、あったかくて優しい雰囲気」というイメージで書きました。入選するには、「書いて、応募」。これに尽きると思います。

受賞作「だいこんのおと」平井美里
とうま君の担任は「大根の音を見つけて」という宿題を出す。次の日、宿題の発表会があり、そこではいろいろな音が……。

募集概要(第35回例)
主催 家の光協会
内容「農業」「食べ物」「ふるさと」「自然」を題材にした童話作品。対象は就学前後の子ども。
枚数 5枚以内
賞 30万円
選考委員鬼塚りつ子 小森香折 きむらゆういち 山下明生 ほか
応募数 第34回・869編
締切 6/30

日産 童話と絵本のグランプリ 創作童話部門

取材メモ

「くじらすくい」「こめとぎゆうれいのよねこさん」など、過去の受賞作のタイトルを見ても発想の面白さがポイントとわかる。グレードの指定はないが、絵本になる前提があるせいか、入選作は小学校低学年~中学年向けが多い。

応募数が多いのでタイトルから勝負!

第35回大賞 水凪紅美子
18年ほど前から本腰を入れて応募するようになり、『ミツバチの童話と絵本のコンクール』の童話部門で受賞したことがあります。

『日産 童話と絵本のグランプリ』は、応募数が多いのでタイトルから勝負だと思い、そこはじっくり考えました。誰でも読めるひらがなで、難しい言葉も使わないこと。でも、なんだろう、と意外性のある題名にしました。

ギリギリまで推敲することはとても重要です。でも、応募フォームに入れてみたらはみ出していて、締め切り当日だったので、焦って修正しました。推敲は念入りに、でも、心に余裕を持つ時間を残して、です。

受賞作 「くじらすくい」水凪紅美子
小学5年のトオルは夏祭りに行き、神社の後ろの林に行く。「なんだ、金魚すくいか」と思ったが、それはくじらすくいだった。

募集概要(第36回例)
主催 大阪国際児童文学振興財団
内容 創作童話
枚数 5~10枚
賞 50万円・単行本化
選考委員 富安陽子 吉橋通夫 ほか
応募数 第36回・2044編
締切 10/31

北日本児童文学賞

取材メモ

予選通過者名は、北日本新聞のWEB新聞webunに、1次審査通過者、2次審査通過者のように名前が出るので、はなからだめだったのか、最終審査の一歩手前までいったのかわかり好評。受賞作は北日本新聞とwebunに掲載される。

自分が面白いと感じた作品なら応募!

第17回最優秀賞 清水温子
北日本児童文学賞への応募は10回目くらいです。短編であることと、1次審査から通過者の名前が出るのでこの賞を選びました。

応募歴は20年以上です。第9回小梅童話賞(優秀賞)、第18回日産童話と絵本のグランプリ(佳作)、第16回ジュニア冒険小説大賞(大賞)、第5回児童文学草原賞(草原賞)に入選したことがあります。

応募の傾向を考えた結果、私の作品は現実路線で、この賞に求められている作品ではないのではないかと悩みましたが、自分が面白いと感じた作品なら応募してみる。最後は自分がどう決断するかだと思います。

受賞作 「ヒロタ君へ」清水温子
るみは広島の小学校に転校し、入れ違いで転校したヒロタ君に手紙を書くことになる。るみは「どんな子?」と聞いてまわる。

募集概要(第18回例)
主催 北日本新聞社
内容 小学校高学年まで
枚数 30枚以内
賞 50万円
選考委員 那須正幹
応募数 第17回・351編
締切 5/31

アンデルセンのメルヘン大賞

取材メモ

立原えりか先生が予備選考を行い、イラストレーターが絵を描きたいと感じた作品を選ぶ。読んだ瞬間に絵のイメージがふくらんでいくような作品を。大賞、優秀賞作品は絵とともに「アンデルセンのメルヘン文庫」に収録される。

4度の入賞を経て、念願の大賞受賞!

第36回大賞(一般部門) 吉田洋子
10年ほど前から童話を書き始め、過去にアンデルセンのメルヘン大賞の入賞を4度受賞。今回ようやく大賞を受賞できました。

過去の受賞作品を読んでみると、奇抜なものよりも心温まるお話が多く、ファンタジーであっても暮らしに根差したものという印象を受けました。

お話の種は暮らしの中にたくさんあると思います。身の回りをよく観察して想像力を働かせると、テーマが浮かんできます。ネット検索に頼り過ぎず、外に出てさまざまな経験をすることで、リアリティーのある作品が生まれると思います。

受賞作「はい、ニンジンです」吉田洋子
順太君はニンジンが嫌い。おばあさんの家のニンジンはウサギが作っていて、ある夜、順太君が眠っているとウサギが現れ……。

募集概要(第37回例)
主催 アンデルセングループ
内容 創作童話
枚数 8000字以内(一般部門)
賞 30万円(一般部門)
選考委員 立原えりか 河田久雄 浜野史子 藤本将 水野ぷりん 最上さちこ
応募数 第37回・890 編
締切 1/10 

日本新薬こども文学賞 物語部門

取材メモ

賞創設当時はしっとりとした優しいお話が多かったが、ここのところはワクワクするような楽しい話が入選している。内容は問わないが、絵本になるという前提があり、高学年向きのファンタジーなどより幼年童話のほうがよさそう。

子どもが楽しい気分になれるかを考えて創作

第11回最優秀賞 杉江勇吾
子どもの就寝時間に添い寝をし、そこで毎晩、即興でお話をすることに。子どもの評判の良かった物語を応募しました。

どうすれば隣で眠っている子どもが、一日の最後に楽しい気分になれるか? それだけを考えて毎日物語を創作しています。

応募の傾向以上に、この絵本がどこで手に取られて、誰に読まれるかを徹底的に考えました。小児科や図書館に配布されるということで、その場に来た子どもが手に取ってくれるか? 手に取ったあと、内容を理解して楽しい読後感を得てもらえるか、ターゲットの状況はかなり意識してイメージしました。

受賞作 「みみくそくん」杉江勇吾
みみくそくんはけいごくんの耳の中にいて、けいごくんと仲よく話せる。しかし、耳くそがあることをママに知られてしまい……。

募集概要(第12回例)
主催 日本新薬
内容 絵本の原作の物語
枚数 6枚以内
賞 30万円
選考委員 (第11 回)かさいまり 細谷亮太 すとうあさえ 山本省三 ほか
応募数 第11回・1160 編
締切 2/11

童話一口メモ

〔リアリズム童話〕
子どもの日常生活をありのままに書いた童話。写実主義だから動物が話したりはしない。子どもは生活範囲が狭いため、学校か家庭が舞台となることが多いが、旅行先が舞台の場合は冒険物語風になることもある。

〔短編童話〕
シンプルでわかりやすい展開をする反面、極めて象徴的、寓話的な話にすることができる。書かれていることは子ども向けでも、そこに人間の真理を見出したりできる。短いだけに細部のリアリティーは問われないことが多い。

〔ファンタジー〕
ファンタジーは大別して3種類ある。1.現実から異世界に行き、帰ってくる話。2.異世界のみで成立する話。3.主として現実世界が舞台だが、その中で不思議なことが起きる話。短編ファンタジーでは1.または3.が多い。

※本記事は2020年4月号に掲載した記事を再掲載したものです。