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【作家になりたいあなたへ】石崎洋司&牧野節子が語る! プロになれるかは「根性と粘り」があるか

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ベストセラー作家&児童文学の人気講師 児童文学対談

公募ガイドで童話添削をしていたこともある石崎洋司先生と、公募ガイドの読者だった牧野節子先生に、童話の書き方、プロの童話作家になる方法について聞いた。

「こんな童話が書きたい」が、あなたにはあるか

——童話はどうすれば書けるようになりますか。

石崎 日本昔話でもグリム童話でもいいのですが、そうしたものの構造をベースにして、その上に自分の書きたいものを乗せていく。まず入れ物を作る。

牧野 起承は頑張って書くんですが、転で疲れてしまって、そのまま尻つぼみになっていくパターンがあります。そこで私は転のところで「3つのリ」、ドキリ、ウラギリ、モリアガリのどれか1つでも入れられれば成功しやすいですよと言っています。

石崎 セリフでも地の文でもいいですが、「あれ?」「え?」「何?」と書く場面があれば、それがそのまま転になるよね。

牧野 そうですね、やっぱりクエスチョンが読者を引っ張っていくというところはあります。それでそれを解いていく過程を面白く読ませる。結で長々と説明する方もいますが、それはちょっと野暮かなと思います。

石崎 起承転結のバランスが大事ですね。公募ガイドで連載していた木暮正夫先生が言っていたのは、5枚の童話なら起が0.5枚、承が1枚、転が2.5枚、結が1枚だと。これを意識するだけで起や結がだらだらしない、盛り上げるところで分量を使うということがわかってくる。

牧野 起のところで、時代はいつで、場所はどこで、誰の物語なのかをちゃんと伝えておくことも大事だと思います。

石崎 牧野さんは書くときにプロットは作るタイプ?

牧野 私は最初と最後を考えて、まん中を埋めていくタイプです。

石崎 僕はスタート地点だけは決めて、どこに行くかはわかりませんというタイプなんです。しかし、結末がわからないからこそ、ここで事件を起こさないとダレるよとか、起承転結を強く意識している自分がいる。構成やバランスを考えているもう一人の自分がいて、書いている自分と引いて見ている自分が出入りしている感じ。

——初めて童話を書く方が、意味なく昔話風だったりメルヘン調だったりするのはなぜでしょうか。

石崎 簡単に言えば、童話を読んでいないんだよね。読まずにイメージだけで書いているからそうなる。逆に言えば、「こんな童話が書きたい」という作品があれば、書くものも全然違ってくるはずです。「それがありますか」と僕は問いたい。

バッドエンドでは入選しにくいが、読後感による

——創作のトレーニングについてはどうでしょうか。

石崎 まず読むことだよね。「物語って普通こうだよね」っていう普通がわかるまで読む。

牧野 読むのが苦手な人なら、映像から学ぶのも手ですね。

石崎 香月日輪さんが、そうですよね。あの人は小説を読まない。その代わり、漫画とアメリカのドラマが大好きで、だから物語のパターンやキャラクターの動かし方は死ぬほどわかっている。

牧野 映画でも漫画でもドラマでも、漫然と観ているだけでなく、自分の創作に取り入れるつもりで観ると、そこから得るものって多いですよね。

石崎 僕も創作講座に呼ばれたときなどは、「ドラマを観ていて、セリフのないところをどう書くか考えてみたらどうですか」と言うんです。どういう表情をしたとか、カメラも寄ってみたり引いてみたり、そういうのを意識するだけで書くときにずいぶん違ってくると思います。

牧野 書く目というのを持って生活していると違いますよね。

石崎 ネタを探している人が多いんですよ。それより、お話の構造をどうするか、キャラクターをどう立てたらいいか、どの一言を書けばこの子はやんちゃな子で、この子は内気な子ということが表現できるかなど、ふだんはそっちを考えたらいいんじゃないかな。

牧野 描写をせずに説明してしまう方もいますが、そういう方はふだんものを見ていないのではないかと思います。目に映ったものを描写的に言葉にするということを日常的にやっていれば、それが文章に生きてくると思います。

——説明と言えば、性格を表現するとき、「優しい子」と説明してしまう方がいます。

石崎 「悲しい」とか「うれしい」とか抽象的な感情を言葉で書かないことですね。うれしいのであれば、うれしいという状況を具体的な動きにする。それを自分に課す。それとセリフのあとの「と言った」ですね。特に短い童話の場合、これにとられる1行ってでかいんですよ。これをやっていると5枚なんてすぐに終わってしまう。

牧野 これは人物のキャラ分けにも通じますが、「と言った」を書かなくても誰のセリフかわかる口調にして分けていくことが大事だと思います。

石崎 セリフのキャラ分けですよね。それからセリフの前か後に、〈急に立ち上がった。〉のように書いて、怒って言ったんだということをわからせるとか。

——すごくうまいラーメンがあって、3年ぶりに食べたらそうでもなかったというような大人の話を童話にするには?

石崎 その場合は主人公を動物にすればいけるよね。小沢正だったら書きそうだな。動物ものの場合、なんだか深い話だなという流れがあるよね。小沢正の『目をさませトラゴロウ』なんて哲学みたいな話にも読めるからね。

牧野 動物ものの場合、擬人化した意味があるといいですね。童話だから動物というのではなく、動物が入っている意味を考えると面白く読めると思います。

——昔話や古い西洋の童話の影響か、教訓的な終わり方をする方も多いです。

石崎 教訓的な話を書いて入選する可能性は薄いでしょうね。そういう童話もあるけど、西洋人は宗教観が違うから、『フランダースの犬』も悲しいとは思わない。天に召されてよかったと思う。

牧野 アンデルセンの「赤い靴」も、足は切断することになったけど、信仰心を取り戻せてよかったという話になっていますね。

——童話ではバッドエンドにしないほうがよさそうですね。

牧野 ただ、バッドエンドがすべてだめなわけではなく、悲しい終わり方でも少し光が差しているとか救いがあるとか、読後感がよければ入選するかもしれません。

石崎 僕は『さよならをいえるまで』という絵本を翻訳したことがあるんですが、これは愛犬の死を受け入れられない子どもの話なんですよ。必ずしもハッピーエンドではないのですが、だって犬は死んじゃうからね。でも、これを変にハッピーエンドにしたら、ペットロスはそんなもんじゃないと悪い読後感になってしまったんじゃないかなと思います。

牧野 悲しいけれど、心にどこか火が灯るような話ならいいですね。

石崎 難しいのは、「現実は違うけれど、そうなってくれたらいいな」というある種のファンタジーとして読みたい子もいること。

牧野 『サザエさん』がそうですね。あれはあり得ないけど、理想という名のファンタジー。

石崎 江戸時代を舞台にした話でも、庶民がそう簡単に武士に勝てるわけがないと思いつつも、ベタな展開を楽しむ。

牧野 多少ウソでも、そのほうがカタルシスがありますね。

プロになれる人となれない人の差は、根性と粘り

——プロの童話作家になるためにはどうすればいいでしょうか。

石崎 僕が主戦場としている「青い鳥文庫」は1ページ40字×14行なんですよ。章タイトルが4行取りなので、1ページ目が10行、次のページをめくって計24行以内でいかにキャラを立て、物語を起動させるかという計算を常にする。2ページ読んで面白くなかったら次を読んでくれないからね。

牧野 つかみが大事なんですね。

石崎 読まれることに対する意識を持つのがプロですね。

——プロ志向の人は出版社主催の長編賞を受賞するのがいいですか。

石崎 1作目が出やすいという意味ではそうでしょうね。

——プロになる人となれない人の違いは?

石崎 根性の差だと思う。どうしてもなりたいと思うかどうか。

牧野 気合ですね。あと、粘り。

石崎 若いときに中上健次と会って、「僕は24時間、小説のことを考えている」と言ったんだよ。へえ、そうなんだと思ったけど、プロになってみると、24時間、小説のことを考えてるよね。プロとしてやっていくためには、いやらしい言い方をすると人と違うものを書かないといけないし、同じ題材なら違う書き方をしたい。そうなると必然的に膨大な量の本を読んでいないといけないし、調べる必要もある。そんなことがどうしたら可能なのかと言ったら、結局は根性と粘りだよね。

両先生の修業時代

石崎洋司先生
初めて小説を書いたら1000枚になり、それを200枚にして木暮正夫先生に読んでもらいました。木暮先生は岩崎書店に原稿を送ってくれたらしく、それがデビュー作『ハデル聖戦記』です。

牧野節子先生
公募ガイドを見て、童話で「小さな童話」大賞を、小説では女流新人賞を受賞。その後、日本児童文学者協会の創作教室で恩師だった国松俊英先生の推薦で『極悪飛童』で単行本デビューしました。

対談の中に出てきた人物解説

香月日輪
小説家。主な著書に『地獄堂霊界通信 ワルガキ、幽霊にびびる!』『妖怪アパートの幽雅な日常』などがある。

小沢 正
児童文学作家。動物を擬人化させた作品が多い。ブラックユーモアな出世作『目をさませトラゴロウ』が有名。

中上健次
『岬』で戦後生まれ初の芥川賞を受賞。ほか、『枯木灘』『千年の愉楽』『地の果て 至上の時』など著書多数。

 

石崎洋司
慶應大学卒。ベストセラー『黒魔女さんが通る!!』などの児童書のほか、YAも多数。本誌ではかつて童話講座を連載。福島正実記念SF童話大賞の選考委員。

牧野節子
日本大学卒。白百合女子大学、共立女子短大などの講師。毎日文化センター、NHKカルチャー青山教室、横浜ランドマーク教室、さいたまアリーナ教室でも開講。

※本記事は2020年4月号に掲載した記事を再掲載したものです。